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■ Suzanne's Diary for Nicholas/James Patterson
ニュヨークタイムスでベストセラーになり、かなり話題の本。バーゲンで400円になっていたので、早速購入して読んでみた。ジェームス・パタースンといえばミステリーと相場が決まっており、個人的にもアレックス・クロス刑事シリーズは大好き。しかしこれは、異色のラブ・ストーリーだというのでかなり興味津々だったのだが、期待が大きかった分、少々失望も。ともあれ、感想を書くのが難しい話だ。
「Katie」が語る部分と「The Diary」としてSuzanneの日記の部分が交互に登場し二部構成のようになっているが、登場人物の関係は下記の通り。
Suzanne─日記を書いた人 Matt─Suzanneの夫 Nicholas─SuzanneとMattの息子 Katie─Mattの恋人
Katieはある日突然、恋人のMattから日記を渡され別れを宣告される。わけが分からないまま日記を読み始めるKatie。それは一度も聞いたことのなかったMattの妻Suzanneの日記で、息子Nicholasに宛てて書かれたものだった。Mattとの恋愛から結婚、そして出産という折々に触れ、家族の愛を書いたものだったのだ。Suzanneは深刻な心臓病を患っており、結果心臓発作で亡くなるのだが(これは容易に想像できるので、書いても差し支えないと思う)、パタースンらしい意外な結末に驚かされる。
しかし、なぜ恋人(死別してから関係を持ったのか、同時進行だったのか今いちはっきりしない)に、妻の日記を見せなければならなかったのか?自分の気持ちを理解してほしいというだけのことなら、ずいぶん身勝手であると思うし、やはりこれは男性の視点で書いた本であるという感じが否めない。女性の過去は許されないが、男性の過去は、たとえ全部さらけ出しても女性が傷つくことはなく、安易に許されるだろうといった類の勘違いだ。
タイトルからするとSuzanneが主人公のようで、大部分が彼女の日記なのだが、本当の主人公はKatieであり、Katie側の結末を書いたものなのである。だが、双方にかかわりを持つMattとは、どういう人物なのだろう?
Suzanneの心臓病のことは承知して結婚したMattだが、妊娠・出産が危険であることも顧みず、子どもを作る。息子のNicholasの出産の時、案の定、危うく死にかけたSuzanneなのに、また二人目を作る。しかし、体が心配だから今回は産まないほうがいいと言うなど、この男、どういうつもりなのだろう?そういう結果は分かりきっていることなのに。優しくていい夫として描かれているが、私には勝手な男にしか見えない。そしてKatieとの関係。。。どうも納得できない。
冒頭、Katieの飼い猫の名前がグウィネヴィアだったり、犬の名前がマーリンだったりして、アーサー王物語ファンとしては、いきなり引き込まれる感じがしたが、延々愛の言葉が連なり、死があり、さらに衝撃的な事実があり、どう見てもお涙頂戴を意識して書いているとしか思えない筋書きに、結果としては退屈した。結局、アメリカ人が好きそうな「ちょっといい話」だったわけだ。
パタースンは、その時流行の本や音楽などを取り入れる作家で、それは読む側としてはひとつの楽しみなのだが、今回は、Katieが『Harry Potter and the Goblet of Fire』(『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』)を読み、テレビで『Ally McBeal』を観ているという記述があったりした。そして「Sun Tea」も出てきた。当然「Sun Tea」の出所である『The Bridges of Madison County』の話題も。そういった部分は結構楽しかったが、『マジソン郡の橋』を誉めているようなパタースンのラブ・ストーリーは、私としては納得できないかも。逆に言えば、『マジソン郡の橋』を好きな人は、この本も気にいるかもしれない。
2002年07月13日(土)
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