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 細菌ハックの冒険/マーク・トウェイン

本書に描かれた細菌の世界は結局、人間の世界の縮図である。必然的にこの作品の中心テーマは人間というものの本質、そしてその存在価値に関わる重いものとなっている。かつて人間であったコレラ菌ハックは両方の世界を比較しながら、至るところで人間の性質を包み隠さずに述べていく。それはどれも、人間というものを知り尽くしたトウェインならではの鋭い指摘ばかりであり、そのためにかなり読みごたえのある内容となっているのだ。辛らつな皮肉もある。しかし、その一方で、主人公の語りには怒りや絶望感、あるいは軽蔑した調子はなく、説明は愚タオ的でしばしばユーモラスなものにさえなっている。─訳者あとがき

あの、ハックルベリー・フィンがコレラ菌に!というので、そのアイデアにとても興味を持ち、さらに冒頭の書き出しは非常に面白く好奇心をかき立てるものだったにも関わらず、この本は「トウェイン・マニア」以外にはお薦めできない。

内容は訳者あとがきに述べられている通りなのだが、なんだか小難しく、まるで哲学書でも読んでいるような感じ。あのハック・フィンを想像して、また期待をふくらませたりしていると、まるで違うハックに遭遇して、とんでもなく面食らうことになる。

それでも興味を持って読んでみたいという方は、きっとトウェインの世界を深く理解できることだろう。トウェインの世界は、「トム・ソーヤ」や「ハックルベリー・フィン」などではなく、むしろこちらのほうが本質だと思うから。



2002年07月16日(火)
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