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■ ミルク・イン・コーヒー(BOOK PLUS)/エリック・ジェローム・ディッキー
<訳者あとがき>より 骨まで凍えるニューヨークの冬。南部で育ち、いまはこの街に暮らす黒人のジョーダンは、空車と思ったタクシーに飛び乗ってから、先客がいたのに気づく。赤い髪に白い肌をした、その美しい女性の名はキンバリー。ふたりは恋に落ちるのだが・・・。
黒い肌の男性と、白い肌の女性とのラブ・ストーリー。一昔前、あるいは保守的な地方の町の出来事なら、白人側からの差別や偏見がジョーダンを苦しめたことだろう。でも、現代のニューヨークに生きるジョーダンにとって、最大の障害は同じ黒人の目、そして自分自身の心なのだ。そして、屈託なく自由にふるまっているように見えるキンバリーも、実は心の奥底に、肌の色についてのあるこだわりを隠していた。
出だしは、これもまたよくある、ニューヨークのファンキーな黒人の話かと思ったのだが、結構きわどい描写などを経て、最後にたどり着くのは、なんとなく暖かな気持ち。ファンキーでヒップで軽いノリなんだろうな、と予想していた内容とはだいぶ違っていた。
ジョーダンの語りと、キンバリーの語りという二つの語り口で書かれているものの混乱はなく、むしろそれぞれの立場が良くわかって、なかなか良かった。二つの語り口というのは、コーヒーにミルクが(あるいはミルクにコーヒーが)徐々に混じっていく様子を連想させる。タイトルはそのまま白と黒という意味で、根底に流れるテーマは人種差別だ。つまり社会の差別の中で、ジョーダンとキンバリーが理解し合っていく過程を描いているわけだ。そしてまたここには、白人と黒人の「混血」という意味もある。
冒頭のイメージで、この手の小説なら400ページ(2段組)はあっという間かと思ったが、意外にも濃い内容で、人種差別のほかに、友情や親子の愛情、暴力、リストラなどなど、多彩なテーマが盛り込まれており、結構じっくり読んでしまった。
特にキンバリーと父親のやり取り。個人的な思いだが、ここにはやはりジーンとくるものがあった。父親とは、なかなか娘に本音を言えないものだ。世界中で一番愛していたとしても。
ところで、恋愛と友情はどちらが大切か。人それぞれだろうが、恋人に裏切られるよりも、友人に裏切られるほうが怒りは激しいのではないだろうか?ここでも、日頃温厚なジョーダンが友人の裏切りを知って怒り狂うが、その気持ちはよくわかるような気がする。悲しみは同じように深くても、怒りは数倍激しいと思う。
さて、ジョーダンはどんなことで友人に裏切られたのか。それがこの物語のどんでん返しとも言うべき部分で、あっと驚く仕組み。そしてキンバリーにも意外な秘密が。。。
2002年07月01日(月)
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