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 タラ通りの大きな家(下)/メイヴ・ビンチー

失意に沈むリアが受けた電話はコネティカット州に住む大学の事務員マリリン・ヴァインという女性からだった。マリリンは一夏の間、自分の家とダブリンに住む誰かの家を交換して住んでみたいというものだった。その話を聞いたリアは自らの現状をマリリンに告白し、交換家主として名乗り出たのだった。話はまとまり、リアはコネティカットへ、マリリンはダブリンへと旅立つ…。心に深い傷を負った女性二人の悲哀を著者独特のユーモアをまじえて描いたもうひとつの二都物語。

<訳者解説>
『タラ通りの大きな家』のおもしろさは、アイルランド人リアとアメリカ人マリリンが家を交換し、それぞれの土地柄や気質の違いからはじめは戸惑ったり腹を立てたりしながらも、結局は周囲の人々を巻き込みつつ心の平和を得ていくところにあるだろう。おせっかいで人のことが放っておけず、噂話が大好きで、人が良く、家族意識の強いアイルランド人の典型リア。リアのまわりには歯に衣着せぬ母親ノラや不平家の姉ヒラリー、反抗と連帯に揺れ動くアニーと弟ブライアンらがいて、アメリカからやって来たマリリンは、いつのまにやらアイルランドのペースに否応なく乗らされ、気づいてみると自分が問題解決の中心にいて、人のために奔走している。けれどもはじめは嫌でたまらなかったそのおせっかいが、結局はそれまで硬く閉ざしていた彼女の心を開かせ、再び人と関わる人生を歩ませることになるのだ。そしてリアはリアで傷つきながらも彼女自身のプラスのエネルギーを、なんとか絶やすことなく、アメリカで得たものを基に、これまた新たな人生を歩むことになる。

というわけで、上巻では夫の不倫で家庭が崩壊する話なのかと思わせておきながら、実は「母は強し、妻は強し」といった結論になるのだろうか。確かに家庭は壊れたが、それをバネに主人公リアは新しい自分を発見し、強く生きていくのだ。そしてマリリンもしかり。

それにしても、やはりアイルランド。必ず大酒のみで暴力をふるう男が登場する。今回その手の登場人物は、リアの友人の夫だったが、それでも離れられない夫婦の不思議な絆が描かれている。そして夫婦の絆と言えば、リアもマリリンも例え結果がどうあろうとも、その絆は強いのだということを示している。

注目すべきは、とてもカッコイイ女性として登場したリアの友人ローズマリーだ。リアの一番の親友かと思っていたら、実ははなからリアを裏切っていたことが判明する。たまたまそれを知ってしまったマリリンは、ローズマリーを激しく憎悪する。それも確かに当然だとは思うが、一番だらしないのはリアの夫ダニーであろう。口は達者だが、この男の身勝手さには辟易する。ダニーから離れ、自分の道を切り開いていったリアだが、実のところそのほうが幸せになれるのではないだろうか?


2002年06月13日(木)
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