バームクーヘン

 髪を切った。
 色を明るく染めた。
 思ったように明るくならないのは、私同様に私の髪は少し強情なのだろうと思った。
 変革を試みながら、恐れるのだ。
 外面を変えてみても、中身は変わらない。
 ま、ゆるやかに。焦らず。



 爪が変形変色している。なにかの病気みたい。
 もうずっと前からだけど、放っておいていたらすごいことになっていた。
 病院に行く暇もなかったからな、と嘆息してみる。
 後戻りできるのかな。
 きれいに戻れるのかな。
 別にいいけどさ。
 動き出そうとしたけれど、少し恥かしいな。
 少しまえまでは、平気で電車に乗っていたのにな。


 元職場から碌でもない電話があったり、病院に行ったら先生がいなかったり、なんだかうまくいかない。薬だけもらって帰ってきた。
 薬。薬を飲むたびに過ぎた9年間のことを考える。
 なんて遠くに来てしまったのか。
 でも後悔はしない。
 いつだって自分でダイヴしてきた。
 9年間はミルフィーユの一層になるだろう。
 バームクーヘンでもいいや。年輪だ。
 ファッキンな電話も笑って対処した。
 9年間の賜物だ。
 私はスーツとスーツに合う靴と鞄を手に入れたと云われた。
 それならいい。それでいい。
 それらが年輪の一部分になっているのだろう。
 バームクーヘンはくるくる巻きながら作る。
 後戻りはできないのさ。それでいいのさ。
2005年04月07日(木)

メイテイノテイ / チドリアシ

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