水溜りに入りたい

 月曜は怖い。
 月曜を恐れて眠れない日曜は怖い。
 前回増やした睡眠薬に、更に日本酒を約半升飲んでも眠れないとなると、もーお手上げ。体と頭に鉛を埋めこんだよう、それでもまるで眠れないので明け方頃、近所の自動販売機に煙草を買いに出かけた。
 ひんやりした空気が心地いい。そういえば冬の朝が嫌いではなかった。
 帰宅すると犬が目を覚まして出迎えてくれた。ぴんと立ったベルベットのような毛並みの耳をつまむと、目を細めて見上げてくる。寝起きでぬくい背を撫でると濡れていた。犬を見下ろす私の前髪から雫が額に頬にと伝っていった。
 雨が降っていたのだと、そのときはじめて気付いた。
 水溜りに入ったのか、靴と足が濡れている。
 「ダメだコリャ」
 声を出しておどけて云ってみると、犬が尾を振った。笑えた。
 「ダメだコリャ」
 明け方に、濡れそぼりながら犬を相手にひくひくと笑った。

 玄関で濡れた足を拭い、煙草に火をつけた。
 もういちど、水溜りに入りたいと思った。
 大竹まことさんのエッセイに、そんな話があったっけ。
 「取り返しのつかないことしちゃおっかなー」
 シティボーイズライブ「Not Found」の大竹さんの台詞を思い出す。
 私もしたい。取り返しのつかないこと。
 考えてみよう。



・プラン其之壱
 大ボスの職場内W不倫を証拠をそろえて互いの家族に送りつける。

・プラン其之弐
 半年前まで重役出勤だった大ボスが最近やけに早いのは、早く家を出て職場近くの公園で一杯ひっかけているからだとエライ人にチクる。

・プラン其之参
 会社に火を付ける(※大ボスのハイライトから出火したように見せかける)。


 …あーダメだ。もう思いつかない。想像力が貧困で困るゼ。
 大ボス絡みばかりですが、実は書いているほど彼を嫌いでも憎んでいるわけでもなく、ただ自分のこのテイタラクを誰かの所為にしてしまいたく、手っ取り早いのが「彼」という存在だと、単にそれだけ。私の他人より物足りないシナプスも負のイメージとしかリンクされていないことは事実でありますが。仕事に好き嫌い云々を持ちこんでもナ。
 マ、なんというか。楽なンだよネ。ワルモノがひとりいるとサ。現実でも現実的ではないロジックの上でも。別にそれがこの際「創造主」でも構わないのですが、やり場のない感情を云々するのはやはりメンドイし、シンドイ。
 あー私はもっと「取り返しのつかないこと」をするなり、ダレかを思いきり怒ったり憎んだりするくらいのバイタリティーが欲しいゼ。
 メイテイノテイで犬相手にへらへら笑ってないでサ。
 さて、寝るぜ。明日は火曜だぜ!あばよ!
2004年12月06日(月)

メイテイノテイ / チドリアシ

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