何かが変わるとは思わない

 君と躰をつなぐことが物理的に可能なのだと、私は初めて意識した。
 知ってはいたけれども、ただ自分の身におこりえるとは思えなかったのだ。
 なぜこんなことになったのだろう。
 巧みなキスに体中が粟立つ感覚を覚えながら、私は自分のなかから君を好きだと叫ぶ細胞を探そうとした。
 口実が欲しかったのかも知れない。
 それはけれど徒労に終った。
 醒めて冷めてゆく自分を自覚したら可笑しくなって躰を離した。
 君の熱に気付かないふりをして、笑って誤魔化した。
 君も誤魔化すように笑った。
 互いの心がないことを、私たちはよく知っていた。


 何かが変わるとは思わない。
 こんなことで何かが変わるとは思わないよ、私は。
 互いに心がないことは、私たちがよく知っていたじゃないか。
2004年09月20日(月)

メイテイノテイ / チドリアシ

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