こういう奴もいるってことで。

 昨年秋の日朝首脳会談以降、日記読者がちょびっと増えました。
 でも「〜についてどう思うか」とか「〜について書いて欲しい」というメールを頂くと、正直困惑してしまいます。

 あのー、一応紹介文などにも自分が在日コリアンであることを明記しているし、日記にもフツーにそういう言葉が出るけれど。
 それは、それを避けて通って書こうとすると、どうしたった無理がおこるし、嘘を書くことになる。そういうのがめんどいからです。
 ただそれだけです。
 在日コリアンやその周辺の事情ついて、特別何かを主張したいとか、そういう気概は持ち合わせていません。
 じゃあなんで書くのかって聞かれたら、困っちゃうんだけどさ〜。
 政治などに関しては、書かないんじゃなく書けないのです。無知だから。


 ただ梁石日さんの小説「血と骨」から言葉を借りるならば。

 「俊平には国家や祖国という概念はない」
 「生まれた故郷である済州島に対する思いはある」

 これに似た感情は持っていると思う。
 ただし、「血と骨」の主人公・金俊平とは違い、土地ではなく、人間に持っているのだと思う。
 祖父母の生まれ故郷である慶尚南道(韓国)には、何の感慨もない。また、「帰国」した伯父の子供たちが住むという、行ったことのない咸鏡北道(北朝鮮)にも、修学旅行で一度行ったきりの平壌にも何の感慨もない。
 それでも、そこに住む親戚や、親しい友人たちに対する思いはある。

 しかしそれもよく知る範囲の人たち対してばかりで、20万人以上いるという同一本貫の人たちや、50万人いるという「在日同朋」全員にまで思いを馳せるほど深謀遠慮するニンゲンじゃないのです。
 ワタシの本貫はモトを辿れば中国に至るらしいし、そういう理由もあって、「民族」に過剰な思い入れはないのです。

 冷淡ですか?無責任?
 じゃあさ、日本人のミナサンはあります?
 「日本民族」の根源は、朝鮮民族以上に複雑で不鮮明ですよね。
 そもそもそういうのを辿っていくことに、あまり意義を見出せない。

 ワタシは「教育熱心」な両親の元で民族学校に通い、物心つく頃には自分が在日朝鮮人だと知っていたので、そういう育ち故に、自分が「他の日本人」とはちょっと違うかも知れないということを自覚してはいるけれど。
 それで何が変わるかってーと、どうなのかなー?

 あまりトクベツじゃないですよ。
 「ちょっと違うかもしんない」ってだけで。

 ワタシの考えは在日コリアンの総意ではあり得ないし、だからといってとりわけ違う考えを持った在日コリアンってわけでもないし。
 隠すと嘘になるし、わざわざ嘘を書くのはめんどいからそうしないだけで、当たり前だけど、色々な日本人がいるように、色々な在日コリアンがいます。
 こういう奴もいるってことで、納得していただけないでしょーか。
2003年03月12日(水)

メイテイノテイ / チドリアシ

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