紫
|MAIL
目次|過去の日記|未来の日記
父の車には、盗難保険がかかっていました。
微々たる額ですが、それでも不幸中の幸いというところでしょうか。
「車を盗まれたなんて格好悪い」
と、父は毎日言い、母はそれを毎日なだめています。
怒りを口に出せるようになっただけ、元気になってきたのでしょう。
昨日、いつもより帰りの遅かった父。
ずっと車の停めてあった駐車場に座っていたそうです。
そういえば子どものころに、自転車を盗まれたことがあります。
しょんぼりしながらも私は、何度も盗まれた公園を見に行っていました。
「もしかしたら、自転車が戻されているかも」
公園のブランコに座りながら、道行く人が乗っている自転車を見つめても、よく遊んでいた鉄棒やすべり台に自転車の行方を尋ねても、自転車が出てくるはずがありません。
やっぱり盗まれたんだ、という事実を再確認して、とぼとぼと帰路につきました。
きっと父もそんな気分なのでしょう。
さすがに今日は、風が強くて、ちらりと駐車場をのぞいてくるだけだったようです。
少しは口数が多くなったとはいえ、今日も「シュン太郎」の父。
いったい父の車はどこに行ったのでしょう。
父の代わりに窓の外を吹く風に聞いてみても、ぴゅうぴゅうと音を立てているだけで、なーんにも答えてくれません。
世の中には、悪い人がいるもんだ。
ぷん。
目次|過去の日記|未来の日記