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紫 |MAIL

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2003年01月23日(木) 誰も知らない

父の車には、盗難保険がかかっていました。
微々たる額ですが、それでも不幸中の幸いというところでしょうか。

「車を盗まれたなんて格好悪い」

と、父は毎日言い、母はそれを毎日なだめています。
怒りを口に出せるようになっただけ、元気になってきたのでしょう。
昨日、いつもより帰りの遅かった父。
ずっと車の停めてあった駐車場に座っていたそうです。

そういえば子どものころに、自転車を盗まれたことがあります。
しょんぼりしながらも私は、何度も盗まれた公園を見に行っていました。

「もしかしたら、自転車が戻されているかも」

公園のブランコに座りながら、道行く人が乗っている自転車を見つめても、よく遊んでいた鉄棒やすべり台に自転車の行方を尋ねても、自転車が出てくるはずがありません。
やっぱり盗まれたんだ、という事実を再確認して、とぼとぼと帰路につきました。

きっと父もそんな気分なのでしょう。
さすがに今日は、風が強くて、ちらりと駐車場をのぞいてくるだけだったようです。
少しは口数が多くなったとはいえ、今日も「シュン太郎」の父。
いったい父の車はどこに行ったのでしょう。

父の代わりに窓の外を吹く風に聞いてみても、ぴゅうぴゅうと音を立てているだけで、なーんにも答えてくれません。

世の中には、悪い人がいるもんだ。
ぷん。


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