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■ こわいもの。
この身体が疎ましい この身体が嫉ましい
何故思うように動かないのか 凍っていく意識の中で 何かを叫んでいる
この身体がいやらしい この身体が汚らわしい
雲が懸かったように はっきりと見えない ぼおんやりと鈍く 淡い光がさしている
誰かが何か言っている
ちっとも聞こえて気やしない ちっとも見えて気やしない
俺の目の前は闇だ 闇に埋もれている
ああすべてが消えてなくなってしまえばいいのに 俺はただ目の前を虚ろに歩くソイツが 死神だと知った
俺を連れてゆくか
奴が聞いた
俺を連れてゆくか
ソイツの深い深い落ち窪んだ両の闇が 俺の顔をじっと見るのだ
俺は次第に怖気づいて後ろへ一歩下がった
するとソイツの口元が 緩々と広がって まるで空に懸かる弓月のようになった 真っ赤な裂け目から腐った肉塊が覗く
哂ったのだ
全身を寒気が走り抜けた
こわい こわい こわい
俺は必死で逃げ出した でもうまく足が動かない 耳元でソイツの吐く息が聞こえる 俺の心臓を摑んでは 締め上げてくる 息が出来ない ピッタリと背に張り付いている感触がする 気持ちが悪い 吐きそうだ ソイツが俺の背を撫でる度 悪寒が背中を逆なでる 俺はソイツを剥がそうと 必死に背を掻いた 服を剥いだ 皮を剥いだ 肉を剥いだ 骨も剥いだ 内臓もすべて地に剥いだ
残ったのはただの塊 だけどソイツは緩々と不気味に哂って 俺を見ている
ゆらゆら ゆらゆらゆらゆら
轟々と吹き荒ぶ砂嵐が 俺を覆っていく もう何も見えない もう何も聞こえない その中を緩々と 黒い闇が二つ 俺をじっと見つめて哂っている
まるで陽炎のようだ
「昨日、昼頃関東地区は局所的に猛暑となり、ここ東京も最高気温が記録的な気温となりました。こちらがその模様です。都心部ではアスファルトの照り返しにより、日射病により倒れる方が後を絶たなかったそうです。しかしその気温も18時頃には次第に弱まり・・・・・・・・・」
2005年05月09日(月)
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