+シコウカイロ+
此花



 人。

悲しい顔をする。
何故ならこの胸に痛みなど感じないから。
他人の痛みを自分のもののように
悲しんでみせる姿は実に哀れで
まるで本当に君が痛みを感じているかのように
見えるというのに

何も感じないこの心は
痛みがなにかを知らないのに
疑似的に真似るまるで他人なのに

そうしなければ
人でいられないから


人でいるフリをする
人でいたいと願っているのかも知れない

痛みなど感じない
生きることに意味など無い

ただ他人が生きている様が
あまりに悲しそうで
苦しそうだから
人はそういうものだと思った



他人の痛みなど感じない。
何故なら同じ人間ではないから

皆 同じ痛みを知っているフリをする

人であるために




何がそんなに悲しいのか
何がそんなに苦しいのか
理由のないものなどたくさんある
無駄なものなどたくさんある
でも
必要の無いとされる
時間の無駄として省かれるものは
人として一番大切なもの




これからの未来に
一体幾人の「人」が生きるだろう
これからの未来に
一体幾人の「ヒト」が生み出される?

生きることに価値を見出せない
人は人であることを放棄し
自ら生きる屍となる道を選んでいく
世に溢れかえる死体は暗黙の笑みを浮かべ
「人」を殺していくだろう。


たまに首を擡げた自分の中の「人」は
また平常のヒトとなる前に
魂の叫びを響かせる歌声が
反響し繰り返し
闇の中を響いていく


幸福を奏でる悲しみの旋律に
微かな希望をたくして

2001年07月13日(金)
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