椰子の実日記【JOYWOW】
2007年04月09日(月)
なぜ当選したら会見で地金がすぐさま出るような知事が当選するのかというとこれもいわゆる一つのカルマかもしれない
最相葉月さん作品は本書が初めてだが、ノンフィクション の書き手として、第一級だとあらためて思った。 事実の読み取りかたがハンパじゃない。 すごい、の一言。 現在の出版事情を考えると、本書に費やした年月(5年くらい か?)、ここまで綿密な取材をする、というのは対象への 愛がなければ不可能だろう。何しろ関係者134人に取材して いるのである。また、周辺の文献の読み込み、資料の読解、 たとえば、一行に込められた「思い」などを読み解いている 鋭い感性は、これぞドキュメンタリー、と思わず快哉して しまう。
星新一は、70年代、ぼくのアイドルだった。筒井康隆と ともに、常に書棚にある作家だった。
本書を読むと、1001編以上のショートショート作品を 残した作家の実像にとどまらず、日本の出版業界の 流れ、SFという未踏分野の開拓史、起業家の父を持ち、 会社の負の遺産を相続せざるを得なかった長男の 思い、そして、死に至るまでの家族の思い・・・という、 571ページに盛り込まれ、さらにその奥に潜む人間の 感情たちに圧倒される。
消費税が導入されたがゆえ、佐野洋の文庫本が書店の棚 から一斉に消えた、というエピソードはすごい。 それまで増刷、増刷だった文庫ばかりである。 理由は、「カバーの印刷しなおしをするくらいなら、 若くて売れ行きの見込める作家の本を並べたほうがいい」 と出版社が考えたから。 佐野洋に限らず、消費税導入をきっかけとして、日本の 書店から消えた作家が多くいたのではないか。 深い、実話だ。
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