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2002年10月12日(土) 『海辺のカフカ』

村上春樹の新作『海辺のカフカ』読了。
この4月からまともに本を読むことなど
ままならなかったけれど、この作品だけは、
熱病に取り付かれたようにあっという間に読みきってしまった。

『ねじまき鳥クロニクル』以来となるこの長編小説は
20世紀末の日本における一連の社会問題、とりわけ
彼自身がインタビュアーとなり『アンダーグラウンド』に
纏められた地下鉄サリン事件、に対する作者なりの
メッセージが随所に散りばめられていたように思う。


≪point of no return≫
「僕らの人生にはもう後戻りができないという
ポイントがある。それからケースとしては少ないけれど、
もうこれから先には進めないというポイントがある。
そういうポイントが来たら、良いことであれ悪いことであれ、
僕らはただ黙ってそれを受け入れるしかない。
僕らはそんなふうに生きているんだ」
(上巻280頁)


≪想像力≫
「すべては想像力の問題なのだ。
僕らの責任は想像力の中から始まる。
イェーツが書いている。
In dreams begin the responsibilities

−まさにそのとおり。
逆に言えば、想像力のないところに責任は
生じないのかもしれない。
このアイヒマンの例に見られるように」
(上巻227頁)


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