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村上春樹の新作『海辺のカフカ』読了。 この4月からまともに本を読むことなど ままならなかったけれど、この作品だけは、 熱病に取り付かれたようにあっという間に読みきってしまった。
『ねじまき鳥クロニクル』以来となるこの長編小説は 20世紀末の日本における一連の社会問題、とりわけ 彼自身がインタビュアーとなり『アンダーグラウンド』に 纏められた地下鉄サリン事件、に対する作者なりの メッセージが随所に散りばめられていたように思う。
≪point of no return≫ 「僕らの人生にはもう後戻りができないという ポイントがある。それからケースとしては少ないけれど、 もうこれから先には進めないというポイントがある。 そういうポイントが来たら、良いことであれ悪いことであれ、 僕らはただ黙ってそれを受け入れるしかない。 僕らはそんなふうに生きているんだ」 (上巻280頁)
≪想像力≫ 「すべては想像力の問題なのだ。 僕らの責任は想像力の中から始まる。 イェーツが書いている。 In dreams begin the responsibilities
−まさにそのとおり。 逆に言えば、想像力のないところに責任は 生じないのかもしれない。 このアイヒマンの例に見られるように」 (上巻227頁)
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