エンターテイメント日誌

2006年06月06日(火) 寒い国から暑い国へ

映画「ナイロビの蜂」の原作は「寒い国から帰ってきたスパイ」で有名な冒険小説の巨匠ジョン・ル・カレである。両者を比較するとプロットの基本構造が似通っていることが判る。

映画の評価はA。まず原作者はイギリス人で、舞台はアフリカなのにブラジル人の監督フェルナンド・メイレレスを大胆にも起用したことを高く評価したい。「ダーク・ウォーター」のウォルター・サレスもブラジル人、「ザ・リング2」の中田秀夫と「THE JUON 呪怨」の清水崇は日本人、「ブロークバック・マウンテン」のアン・リーは台湾人、「トロイ」「ポセイドン」のウォルフガング・ピーターゼンはドイツ人、「サイダーハウス・ルール」「ショコラ」「カサノバ」のラッセ・ハルストレムはスエーデン人、「エリザベス」「サハラに舞う羽根」のシェーカル・カプールは印度人である。才能さえあれば世界中から人材を招き入れる。これこそがハリウッドのしたたかさである。

フェルナンド・メイレレスは母国で撮った「シティ・オブ・ゴッド」の驚異的編集術で世界をアッと言わせ、外国語映画ながらアカデミー編集賞にノミネートされるという快挙を成し遂げた男だが(もしこれが非ハリウッド映画でなければ当然受賞した筈)、今回の「ナイロビの蜂」の切れ味鋭い編集も凄い。映像も凝っているし、その演出力は圧巻である。ミステリの体裁をとりながら、アフリカの現実を観客に突きつける社会派の要素を盛り込んだ脚本も上手い。くすんだ色調のイギリスの場面よりも色鮮やかに描き出されるナイロビの人々の生活が実に生き生きとしており、第一世界から搾取される側に立つ同じ第三世界の人間として、ブラジルの監督がアフリカに共感していることが窺われた。


 < 過去の日誌  総目次  未来 >


↑エンピツ投票ボタン
押せばコメントの続きが読めます

My追加
雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]