エンターテイメント日誌

2006年06月10日(土) 老いるということ

渡辺謙がエグゼグティブ・プロデューサーと主演を兼ねた映画「明日の記憶」の評価はBである。

とにかく原作に惚れ込んで、どうしてもこの主人公を演じたいと執念を燃やした渡辺の気迫が映像から滲み出している。監督の堤幸彦は独りよがりの演出をする駄目な奴だと見くびっていたが、今回は正攻法で卓越した仕事をした。かっちりした原作があって、意欲的なプロデューサーが厳しい目を光らせてる環境下で、それが良い意味で足枷となって功を奏したのだろう。今後も堤には好き勝手をさせず、さまざまな制約でがんじがらめにすべきである。それにしても渡辺は堤に電話を掛けて直接交渉したそうだが、なかなか見事な選択眼である。

結局この映画が語りかけてくるものは、人は望むと望まざるとに関わらず、みな年老いていくということなのだろう。老いを否定することなど誰にも出来はしない。若年性アルツハイマー病に罹った主人公は、他の人よりも数十年早くそれが訪れたというだけのことだ。老いとか痴呆に人はどう立ち向かえばいいのか?その重い問い掛けが観客の胸にずしりと響く。

ラストシーンが美しく、そして哀しい。これは悲劇であるが、と同時に振り出しに戻っただけのハッピーエンドなのかも知れない。樋口可南子が好演。その泣き笑いの表情が深い余韻を残した。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]