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2003年08月08日(金) ■ |
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◆【第10回世界バレエフェスティバル】 《Bプロ》 (8/8、8/10分)ギエム、ルグリ、マラーホフ、ジル・ロマン、ステパネンコ、他 |
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ダンサー達は後半になるにつれ調子のあがる方が多く、良いムードのフェスになっていました。「Bプロ」は「Aプロ」にも入っている同じ演目を、違うダンサーが踊って個性の違いも比較できる、そんなことも楽しみのひとつとして鑑賞しました。勿論、初見の演目も楽しみです。
8月 8日(金)【ソワレ】 (1階R席、舞台がなんとか切れない席で鑑賞。ピアズリーも大丈夫だった…私より端の人は多分見えなかったかな?) 8月10日(日)【マチネ】 (1階左寄り,前方席、カーテンコールのダンサーは目の前)
*【注】このプログラム順序は、8/10のときの並びです。 8/8と8/10では第1部の「白鳥の湖」「海賊」の順番が変わっていました。
指揮:ミシェル・ケヴァル/アレクサンドル・ソトニコフ 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【第1部】
◆「白鳥の湖」より黒鳥のパ・ド・ドゥ 〔タマラ・ローホ&ホセ・カレーニョ〕 振付:マリウス・プティパ、音楽:ピョートル I.チャイコフスキー
オレンジの背景に黒のレース飾りの幕。ジークフリードのカレーニョもオディールにあわせて黒のトップスにタイツ。オディールの衣装もロイヤルらしく細部までよく出来た衣装。
カレーニョは戸惑いの表情や喜びの演技など細やかに演じていました。 ローホも先日の「海賊」よりは、役をどのように“踊りたいか”がハッキリとしていたように思います。その点は良くなったでしょうか。 どっしりと自信に満ちたオディールで、滑らかさと優美さがもう少しあればと思います。 この役は踊りなれているというのがとても感じられ、「ここで笑う」とか、「ここで睨む」とかがちょっと解りやす過ぎる気がしました。自然に見えて深みが出てくると更にいいのですが…。 でもトップバッター(10日)としては、頑張って盛上げてくれました。 フェッテは例のとおりトリプルを入れても安定していましたね。技術があるので違うバリエーションのフェッテも見たかったです。
◆「小さな死」 〔オレリー・デュポン&マニュエル・ルグリ〕 振付:イリ・キリアン、音楽:ヴォルフガング・A.モーツァルト
暗い中、モーツァルト「ピアノ協奏曲」の優しげな音楽が奏でられている。 そして、暫らく経ってから微かにぼんやりと2人の男女が浮かび上がってくる。 このじわっ〜とした導入部分から、詩的で静かで美しかった…。 ルグリとオレリーの衣装はスキン色がベースで同系色のストライプがはいったもの。ルグリは短いパンツ姿、オレリーも生足だったので、身体がライトにさらされ、筋肉の動きがくっきりと映えて、神秘的でもあった。
絡み合う体勢やポーズもキリアンの独特な世界観が現れ、非常に惹きつけられました。 とてもセンシティブな作品ですが、深みや力強さも感じられ、観ていてとても濃密な美しい時間を味わえたと、お二人に大感謝です。
カーテンコールでは、拍手が鳴りやまず、何度も観客の前に登場してくれたのですが、何回目に現れたときは、お辞儀をしないでその場に立ったまま、ただただ全身で拍手を浴び、しばらくの間じっくりと観客の熱狂を、気持ち良さようにあじわっていらっしゃいました。 素晴らしいパフォーマンスの後の素敵な光景で、私もジワァ〜ときました。
◆「海賊」よりグラン・パ・ド・ドゥ 〔バルボラ・コホトコヴァ&イナキ・ウルレザーガ〕 振付:マリウス・プティパ、音楽:リッカルド・ドリゴ
コホトコヴァのメドーラは、先日の「ドン・キ」よりもしっくりと役が合うように思え、良かったと思います。登場シーンから、柔らかな表情といい輝きがありました。 衣装も目を瞠るほど大変美しいシルバーブルーに、額から頭部に輝く大きなティアラ、お団子にしたヘアーのネットにも、沢山のパールがちりばめられていて、いつもながらスゴイ豪華ですね。 ソロはロシア系ダンサーが良く使うバージョンを使用。コーダのフェッテは、4方向に体を正面に向けるテクニックをされていました。(見ていると何故か応援したくなる…)
ウルレザーガは渋く燻した金色のハーレムパンツ。意外に身体が細くてビックリ。 もっさりした雰囲気のせいか、テクニックがあるのに、そんなに観客の支持を受けていない感じ。やはり指先まで神経を行き渡らせる気配りとか、キメる部分がビシッときまると、垢抜けてくるんじゃないでしょうか。 しかし、とにかく頑張っています。
【第2部】
◆「ラ・シルフィード」 〔マリーヤ・アレクサンドロワ&セルゲイ・フィーリン〕 振付:オーギュスト・ブルノンヴィル、音楽:ヘルマン・S.レーヴェンスヨルド
森の中の舞台美術付き。アレクサンドロワは、スタイルが良くて背も高いダンサーですので、シルフィード姿で登場した時は、ちょっと不思議な感じ。 「ラ・シルフィード」は、作品自体たいへん古いですし、踊りや顔の雰囲気が現代的に見える彼女には、ピッタリといった感じではありませんでした。 ですが、フィーリンとのマイムを含めたやり取りは、結構可愛く演技していたと思います。シルフィードらしいかと言えばそうでもない気がしますが、踊りはしっかりと美しいものでした。 衣装は、凝っていて、ラメがきらめく羽は大きめ、胸の中心に花、ロマンティックチュチュは、基本の白に、極薄いピンクとグリーンの生地も重ねられていました。
フィーリン得意のブルノンヴィル。私も期待して拝見しました。 脚の美しさも堪能しましたし、シルフィードとのやり取りも、可愛くふくれっつらをしたり、優しげな目線といい、たわむれ具合が見ているほうも楽しくなります。 以前の公演で見た時ほどの“完璧さ”ではありませんでしたが(そのときはホント見惚れました)、再び見ることが出来て良かったです。 こういった古典もプログラムに入っていて嬉しいですね。
◆「夏」 〔グレタ・ホジキンソン&ロベルト・ボッレ〕 振付:ジェームス・クデルカ、音楽:アントニオ・ヴィヴァルディ
ケヴァルさん、渾身のヴィヴァルディが素敵! 赤の背景。 ホジキンソンさんは」大人の色香と凛とした雰囲気で、私的に好印象。先日の「イン・ザ・ミドル〜」といい、今回といい、完全にボッレをリードしていますね。 たしかはじめにNBSのフェス参加ダンサーの発表時は、“ボッレの相手役として云々〜”と書かれていましたが(日本ではあまりなじみが無かったお名前だったかも…)、でも蓋を開けてみたら、かなり良いダンサーで、容姿も美しいしとても気に入りました。 英語版「DANCE MAGAZINE」の表紙にもなっていますし、本当は元々有名な方だったのですね。
大の字に脚を大きく広げ、脱力した様子で座り込んでいる男。(導入部はこんな感じ) ボッレは表現において、まだ成熟の途中の段階といった感じでした。悪くはないんだけれど、圧倒する何かがまだ少したりない。 あと出来れば、A・Bプロのどちらか一つ、王子様ぶりを見たかったなぁ。 物腰が美しい方ですので…。
◆「レ・ブルジョワ」 〔フィリップ・バランキエヴィッチ〕 振付:ベン・ファン・コーウェンベルグ、音楽:ジャック・ブレル
バランキエヴィッチは今回のフェスで初めて名前を覚えたダンサーですが、特に気に入ってしまいました。観客の多くも私と同じように魅了された人が沢山いたのではないでしょうか。 大柄のスタイルとキレの良いダンステクニックに加え、あのチャーミングな演技といったら!! この演目を見られただけでも「Bプロ」イイですね(笑) Yシャツにネクタイ、めがねのお決り小道具。(以前見たこの作品を踊ったダンサーも同じ。あと脇にテーブルが用意されていた) 酔っ払ってしどろもどろ、おぼつかない足どり…。ユーモアたっぷりの演技。 だけれども、途中挿入されるテクニックは超絶…。
Bプロ初日の時は、こういった凄いジャンプをしたときに、ポケットに入れていた(大切な)タバコを落としてしまい、後で口にくわえて、「ライター持ってない?」が出来ない状況に…。 ポケットにはもう無いので、あわてずに床を探したら見つかって...。この一連のとっさの演技も、実に見事にやり遂げていました。 観客は彼に惹きつけられること!! 後日見たら、こんなハラハラドキドキもなく、すんなりタバコをくわえ、流れるように演技されていたので、本当はこうだったのか、と納得しました。 私はBプロ初日に感じた、彼の魅力と個性に対する驚きを、忘れられそうにありません。
◆「ライモンダ」 〔ガリーナ・ステパネンコ&アンドレイ・ウヴァーロフ〕 振付:マリウス・プティパ、音楽:アレクサンドル・グラズノフ
正統派クラシック・バレエを踊るこのお二人も、フェスを盛り上げる大切な人材ですね。 ステパネンコはボリショイの「ライモンダ」第3幕の鮮やかなブルーの衣装を着用して登場。(でもバレエ団のものは、もうちょっとくすんだ青だったと思うのだが、デザインは同じかな) ウヴァーロフは全身“白”で、初日はマントまで着用し、後日は付けずに登場。揺れる袖口と銀のサッシュベルトに小刀が装着されているような飾りも付いていて、結構凝ったデザインでした。 すごい貴公子ぶり…。 内容は、ステパネンコのソロ部分だけ、あの有名な3幕の哀愁に満ちたヴァリアシオン(ピアノが入っているメロディ)で、他は2幕との事です。
非常に優雅な導入部分。ゆったりとした中にも品があり、ステパネンコは先日の全幕プロの「キトリ」とはガラリと変わり、深窓の姫君を格調の高く演じ踊っていました。 今回も、役をキッチリと意識して、緩むことなくクラシック・バレエの素晴らしい世界を伝えていました。 ライモンダのソロはやっぱり難しいヴァリアシオンだと、つくづく思います。一つ一つの動作や間、スタイルを、観客はピアノ音と共に神経を集中して観てしまいますね。それだけに踊るダンサーも大変気を使うのではないでしょうか。
ウヴァーロフは中世騎士という設定のジャン・ド・ブリエンを、やはり気品と迫力で踊っていましたが、少し覇気がなく、物憂い感じもしました。 でもやはりこの方の踊りは、とても美しいと実感しましたけれど。
→8/10に続く
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