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2003年08月01日(金)
◆【第10回世界バレエフェスティバル】 《Aプロ》 8/1・8/3分、ギエム、ルグリ、マラーホフ、ジル・ロマン、ステパネンコ、フェリ他

8月に入ったら、急に夏らしくなりました。
会場はもちろん超満員。そんなに大げさなおしゃれをしてくる方は少なかったですね。

8月1日(金)【ソワレ】 
(かなり前方中央席で観ましたので、表情をも含めて満喫しました)
8月3日(日)【マチネ】 
(1階L席中央寄り,ぎりぎり舞台が切れない席で鑑賞)

*【注】このプログラム順序は、8/1のときの並びです。
8/3は1部、2部の順番が多少変更されました。

(後のプログラムの方が良くなったように感じ…)



指揮:ミシェル・ケヴァル/アレクサンドル・ソトニコフ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団


◆「リーズの結婚」より 
〔フィリップ・バランキエヴィッチ〕
振付:フレデリック・アシュトン、音楽:フエルディナン・エロール

とても美しいスタイルで好印象を持ちました。
若々しく弾む感じが良かったと思います。
きれいなジャンプにアクセントも効かせて楽しそうな雰囲気が伝わりますが、何せヴァリアシオンだけなので、あっという間に終わってしまい残念です。 
コンクールではないのだから、お相手も呼んで、踊っていただきたかったな。 短かかったけれど印象にも残りましたし、とてもいいダンサーだと思いました。


◆「ロメオとジュリエット」より“バルコニーのパ・ド・ドゥ” 
〔マリーヤ・アレクサンドロワ&セルゲイ・フィーリン〕
振付:レオニード・ラヴロフスキー、音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

きちんとバルコニーのセット付。満天の星空が美しい。
ラヴロフスキーの振付は清らかなイメージがあって結構好きです。
とくにジュリエットがロメオに掲げられて腕を一杯に広げるところとかはグッときます。ロシア系はこちらのヴァージョンが多いのかしら?
さて、ルンキナが出産の為来日できなくなり、代わって、アレクサンドロワの参加となりました。

アレクサンドロワはとても期待されている若手ダンサーですが、その強めで大人っぽい顔立ちのせいもあり、ジュリエットのイメージからは少々離れているように思えます。(年若く純真な可憐さという意味では…)しかし長い手足や動きは大変美しい方ですね。少しジャンプ時の足音は気になりました。

恋する心がぶつかりあうパ・ド・ドゥは、演技しているわりに“熱”が伝わってこなかったかな。濃厚なキスを何度もしていましたけど…。(笑) 
私は、良く踊っているとは思いつつ、その世界に入り込んでいけなかったです。
フィーリンも一生懸命、若い情熱を演じていましたが、2人のこのシーン、何か物足りなさを感じました。プログラムが始まったばかりで、気分が盛り上がる前に観たせいかしら? 

で、後日観た時は、前回より物語のワンシーンがすんなり溶け込んでいて、良くなったように感じました。 踊りに関しては、さすがに美しかったと思います。 フィーリンはBプロでの得意なブルノンヴィルに期待します。


◆「エスメラルダ」より
〔アニエス・ルテステュ&ジョゼ・マルティネス〕
振付:マリウス・プティパ、音楽:チェーザレ・プーニ

いやぁ美しいスタイル。
アニエスは、近くで見ましたが、舞台化粧がほとんど感じられず、すっぴんに見えてしまうほど薄かった。それでも美女は美女、羨ましいわ。
見た感想は、非常に端正で品格があり、けして勢いで踊っていないので、一つ一つのポーズが美しくウットリしました。
押しの強さはそれ程ないものの、オペラ座のクラシックスタイルが充分出ていたと思います。音楽の緩急にピッタリあって観ていて気持ちがいい。

でも本当につくづくこのお二人は“まじめ”なダンスをする方たちですね。
彼女の衣装は、黒地に金の揺れるタイプの飾りが胸元に付いていて、動くたびにシャラシャラと音が鳴り、エキゾティックで素敵でした。
マルティネスは伸びやかで、すごいテクニックを見せても、あくまで紳士的というか落着き感がある。
サポートも安心できるし、乱れたところを見たことが無い…。いつか、激しい演技(演目)の彼を拝見したいですね。はじけちゃってるところとか…(願望…) 大人の彼もいいですけど…たまーにはねぇ


◆「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」
〔グレタ・ホジキンソン&ロベルト・ボッレ〕
振付:ウィリアム・フォーサイス、音楽:トム・ウィレムス

フォーサイスの中では一番上演される演目ですね。世界各国のバレエ団でレパートリーに入っているのかしら? 
オペラ座ダンサーの鋭くて存在感のある演目のイメージでしたが、今回のホジキンソンさんは、けだるくて、めんどうくさそうな演技から、いきなり“攻め”というか緊迫感がある“強い”ダンスへの移行が、よくきまってました。迫力という感じではないですが、こういった作品に慣れている方だと思います。
ボッレは、鋭さというよりバネがある感じ。容姿、スタイルが王子様でした。
虚脱とキレの良さをもっと表して欲しかったかな。 
女性の衣装のレオタード、透けた黒の足首までのタイツを穿いていますが表に出しちゃっているのね。おなかまで上げたり、下がったりやたら位置が変わっている。


◆「ジゼル」2幕より
〔アリシア・アマトリアン&フリーデマン・フォーゲル〕
振付:ジャン・コラーリ/ジュール・ペロー、音楽:アドルフ・アダン

シュツットガルト・バレエ組の「ジゼル」ですが、多少賛否あると思いますが私は好きです。
とにかく作品世界に傾倒した演技が良かった。そしてアマトリアンの切なげな表情が素晴らしい! 
ちょっと昔のダンサーのような古い感じはあるものの、こういった表現もあるんだなぁと感心。

でも踊りに関しては微妙なところも正直ありました。
バランスもピタッとは安定していなかったですし、導入部のゆっくりとしたアラベスクにもっていくところの姿勢や、足を上げる高さも色々なダンサーと比べて、最近では珍しく低め、ジュテ系もそんなに高く飛ぶでもないし…。
わざと抑え目にそのようにまとめているのかしらね。
でも繊細な感情を表したあの演技がいいなと思いましたし、全幕をやってくれるのであれば是非見てみたいです。(1幕の演技も見たい!)

衣装は非常に柔らかい布地で、ロシア系のものとかなり違う感じ。
フォーゲルはアルブレヒトというより、普通の若者のよう。
もう少しドップリ入り込んでもいいかも…ちょっと爽やかな印象でした。
踊りではソロ部分が観客に支持されていましたね。
あと、洗って乾かしたばかりみたいなヘアーをもうちょっと落着かせてほしいかな。(笑)
で、2回目の時は、表情まではちょっと離れていて良く見えなかったので、最初に観た時の良さが、あまり伝わってこなかったのが少し残念。 


◆「ゲッティング・クローサー」
〔シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ
振付:ジョン・ノイマイヤー、音楽:ネッド・ローレン

男性はトップスと短パンでイエロー、女性はごく薄いブルーっぽい衣装。
感動的な映画のクライマックスシーンでかかるような美しい音楽が使われています。
明るいオレンジの明るい背景から、女性の登場と共に濃い青バックに変わり、雰囲気も変わってきました。
リアブコの動きはハッキリとしていて良かったと思います。でもちょっと演目が長めだったので、不覚にも途中から眠くなってしまった。
彼の胸板が薄めで、日本人に近い体形でした。 
最初に観た時より2度目の方がクリアに伝わる気がしましたが、どうだったかというと悩んでしまうの…。 


◆「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
〔アリーナ・コジョカル&アンヘル・コレーラ〕
振付:ジョージ・バランシーン、音楽:ピョートル I.チャイコフスキー

やっぱり“コレーラ”だなぁ。
好きな表現ではないが、許しましょう。自分がこういうパフォーマンスを要求されて呼ばれたと自覚して張り切って踊ってくれたのですから…。
しかし顔の筋肉は力が入りすぎですよ〜。
結構踊りの喜びは表現しているので盛り上げ役としては、混じっていてもいいと思います。
かなり頑張っていますし、イヤミにならないのは彼のキャラ勝ちかも...
しかしアメリカ人は好きそうだなぁ。
ベッシー先生はこのバランシンを見て何とおっしゃるか…(苦笑)

コジョカルの衣装デザインかなり可愛かった。ブルーでプリーツの入った柔らかな布地が動くたびに揺れて…。彼女自身の非常に軽い踊りで、まだ可憐な少女としか見えない。アクセントを付けて踊るというのではなく、自然に踊っている印象。春風を連想しました。
2度目に見た時、最後、コレーラの頭上に掲げられて引っ込む時、あまりにも後ろに反り返った為落ちそうになってヒヤッとしました。あれで落ちたら頭からなので危険だったわ。


◆「シルヴィア」
〔オレリー・デュポン&マニュエル・ルグリ〕
振付:ジョン・ノイマイヤー、音楽:レオ・ドリーブ

黄茶のドレスにトゥシューズ姿のオレリーが旅行かばんを持って脇から登場。ルグリは薄いグレーのだぼっとした上着とズボン。インナーは背景と同じ緑色。ほんのり三日月が出ています。
小劇場の演劇を見ているようで、二人の息のあった絡み具合、微妙な表情がころころ変わるのが、じっくり見て行いくとさすがだなぁと思わせてくれる。きちんとした作品として見たかったかも…。

しかし、オレリーは複雑な感情とか、コミカルに見える演技もうまいですね。古典作品での強そうに見えるヒロインの彼女よりも好きです。
ルグリは本当に大人な円熟ぶりを感じます。 表情と言い、何より雰囲気作りが絶妙。
ガラでの作品としては、地味な部類でしょうね。全編ではどんな作品なのでしょう? 観たいですね!


◆「パヴァーヌ」
〔アレッサンドラ・フェリ〕
振付:ジョージ・バランシーン、音楽:モーリス・ラヴェル

黒背景に真っ白いドレスと同じ素材の大きな布を頭から被ってたたずんでいるフェリ。やがて布の間から細い腕が宙に伸ばされ、水辺を歩く鶴のようにトウのまま一歩一歩と歩むようなステップ。布の動きとフェリのダンス。
何だか無声映画に登場するような古さを感じるダンス作品でした。
バランシンの作品と聞いても、このピンとこない理由はなぜ? せっかくフェスに登場するのだから、他に良いソロ作品は無かったのかしら…。
確かに珍しかったけれど、やっぱりこの人だったら、“演じるバレエ”を観たかったな。


◆「マノン」より“寝室のパ・ド・ドゥ”
〔ディアナ・ヴィシニョーワ&ウラジーミル・マラーホフ〕
振付:ケネス・マクミラン、音楽:ジュール・マネス

「マノン」のこのパ・ド・ドゥは、フェス名物になっているのかしら? 嫌いじゃないが特に観たい部分でもないのです。楽しみなダンサーには、どうせなら他のものを見せて! の心境でしょうか。
さて、バレエ・フェス初登場のヴィシニョーワとお馴染みのマラーホフ。
それぞれでは観る機会が多い2人ですが、組んで踊るとどのようになるか興味深く拝見しました。

しかしヴィシニョーワの媚態は濃い口だなぁ。心変わりもありうる娼婦性、突然襲われる不安感、愛を求める女心を、舞台上で終始魅せつけまくり、マラーホフの印象より彼女の演技ばかり目に入ってしまいました。
柔らかな腕の使い方など独特な感じ。レヴェランスのときも役が抜けなくて色気出しまくりでしたね。
そういえば、いつもカーテンコールでも舞台で素になるところを見たことがないなぁ。

ヴィシニョーワについては、来日のたびに観たいと思わせるダンサーで、素晴らしくて満足できる公演を沢山見ていますが、何故か好きと思えるタイプではない…。でも観ればすごいなぁと感心するし、応援もしている私。
自分でも不思議な位置づけのダンサーです。
これからもずっと更なる成長を楽しみに見続けていくのでしょう...きっと。
マラーホフはオールバックの髪型が目新しい。 この人が女性に夢中になって身を崩すのって想像しがたい感じ。(あくまで私のイメージ)
彼の個性がいきるものが見たかったけれど、ヴィシニョーワには合っていたかな。


◆「海賊」よりグラン・パ・ド・ドゥ
〔タマラ・ローホ&ホセ・カレーニョ〕
振付:マリウス・プティパ、音楽:リッカルド・ドリゴ

カレーニョはガラ公演の度に「海賊」を踊っているイメージ。でもさすがに見事な海賊でした。
パンツが派手なのは、アメリカっぽさを感じますが、演技、テクニック、伸びやかさといった踊りの質の高さが感じられ素晴らしい出来でした。
以下、ローホファンの方は御注意を!

相手のローホに関しては全く魅力を感じません。超絶技巧フェッテはトリプルをきめ、観客にはウケていましたけど、逆にフェッテ以外に良いところって安定感くらいか...?
まず、登場した時の輝きが驚くほどなく、全くの無表情。つまらなそうにさえ見えました。
一応グラン・パ・ド・ドゥでも、ストーリーのある作品の一部という事で、ただ単に踊るのではなく、役を意識して踊って欲しかったです。表情が無いというのが私には辛い。
最後のコーダの後、やっと笑顔を見せただけが唯一表情の変化だった。(固まった笑顔すぎるもヘンですけど、逆なのもちょっと...)
腕の動きも固くて優雅ではない気がしたし、そういうメソッドなのかしら?でもねぇ...

衣装も色あせた色調で張りがなく、何だかイマイチ。
カレーニョの衣装とお互い少しは合わせてみるべきではない? 片方は派手だし、片方はくすんだトーンだし、色調が違っているんだもの。
Bプロではどのように見せてくれるのでしょうか?
今度は少し演技や役柄を意識してくれればいいんだけど…。

>翌日の頁に続く...