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2003年05月10日(土) ■ |
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◆《世界B・F全幕特別プロ》東京バレエ団『眠れる森の美女』(全3幕) マラーホフ、セミオノワ、他 |
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オーロラ姫:ポリーナ・セミオノワ、 デジレ王子:ウラジミール・マラーホフ、
リラの精: 福井ゆい カラボス: 大島由賀子、 妖精たち: 西村真由美、太田美和、武田明子、小出領子、長谷川智佳子、 四人の王子: 木村和夫、後藤晴雄、芝岡紀斗、後藤和雄、 宝石の精: 門西雅美、武田明子、早川恵子、長谷川智佳子、 フロリナ王女: 小出領子、 青い鳥: 大嶋正樹、 白猫: 高村順子、 長靴を履いた猫: 古川和則 〔指揮:ミッシェル・ケヴァル、演奏:東京シティ・フィル〕
開演時間ぎりぎりに、上野の東京文化会館へ到着。 ここには『ジュエルズ』の時以来で、私の一番好きな劇場です。 さて、私は東京バレエ団の『眠り〜』は初見ですが、版のつくりが短めになっていると聞いていましたので満足できるか不安でしたが、他と違うところを考えながら、結構楽しく拝見しました。
美術の印象は、鮮やかな色合いで、子供の頃に見た絵本のような感じ。 森のシーンは色々気になりましたが、ゲストの素晴らしさも堪能できましたので観に行って良かったですね。
“東バ”版『眠り〜』は、他版と幕の進行が違っています。 通常よく観る版は、 プロローグ=《命名式または洗礼式》 1幕=《16歳の誕生日、ローズ・アダージオ、針に刺され眠ってしまう》 2幕=《100年後、デジレ王子が狩りをしに森へやってくる。そこにリラの精が現われ、オーロラ姫の幻を見て心奪われ、姫のもとに向う》 3幕=《オーロラ姫と王子の結婚式》
東バ版は、 通常版のプロローグ部分が1幕となり、2幕にオーロラ姫の16歳の誕生日。 そして3幕は、デジレ王子が登場する、森での“幻の場面”(通常版2幕)と、“結婚式”(通常版3幕)の場をつなげて上演しています。 ですので、森の場面などだいぶ省かれていて、王子役は出番が少ない気がしました。もったいないですね…。
【1幕】
所謂プロローグの場面、色彩豊かな宮殿の大広間。 美術も妖精たちの衣装も華やかな色合いで、おとぎ話の世界を作り上げています。 この日の出演者は若手中心のようで、妖精を踊るダンサーたちは踊る喜びを身体全体で表現していました。 小さなミスはありましたが、元気いっぱいという感じ。 リラの精の福井ゆいさんは少し緊張しているように感じました。 踊りも雰囲気もまろやかでフワッとした印象の方。 初々しいのですが、出来ればもう少し威厳を表現してほしかったと思います。 ストーリーでは、後々も精神的支柱にあたる役ですので…。
妖精たちの踊りの後、手下に担がれて悪の精カラボスが登場。 特に気味の悪いかつらや衣装ではなく、この版の大きな特徴であるチュチュを着た女性ダンサーがカラボス役を演じていました。 黒い蜘蛛の巣模様のチュチュに、赤いアイシャドーで怖めのメーク。 カラボス役の大島由賀子さんはテクニックも素晴らしく、踊りに迫力とスケールを感じました。 また、一緒に登場した手下の男性ダンサーもたいへん豪快な踊りで、大きな見せ場になってますね。
【2幕】
2幕が開くと、いきなり「花のワルツ」。 1幕で妖精を踊ったダンサーもここに参加していました。 (糸巻きを持った娘達が捕まり、王妃の慈悲によって許されて→「花のワルツ」へのエピソードは無し) 王、王妃、式典長の3人が見守るだけなので、舞台上が寂しい気がしました。
さあ、そして待ちに待った(『眠り〜』の場合は特に…)主役のオーロラ姫、注目の18歳、ポリーナ・セミオノワの登場!! びっくりするほど圧倒的なスタイルの良さと、小さな頭、伸びやかで美しい手足、若さ溢れ元気なというより、大変上品で年齢よりも落着いて見えます。そして容姿が大変美しい。 背が高い人にありがちな迫力というよりは、優しげな雰囲気です。 安定感もありますし、まさに主役を踊る為に生まれてきたよう。 マラーホフが惚れ込んだのが納得できますね。 パンフによると、ボリショイ、キーロフ等のオファーを断ってマラーホフのいるベルリンと契約したとのこと。 踊りも品良く、リズムにピタッと合っていましたしバランスもきれい。 まさしく生まれながらの“姫君”に見えました。 細かいお芝居はそれほどみられませんが、まだデビューして間もないこの時期のフレッシュな彼女を見られた事は喜びですね。 これからの成長を見守りたくなりました。
「ローズ・アダージオ」の時に登場する四人の王子達も、姫に心奪われ、競って気に入られようと芝居っけたっぷりで演じていました。 皆、「東バ」が誇る実力者たちなので、踊りもしっかりしていて、安心して観ていられます。 アダージオ後、通常は女官か姫の友人が踊る場面も、四人の王子の踊りが挿入され、スピード感と迫力が増しますね。 でもこの幕、全体にもう少し人数をかけてもいい気がします。 ドレス着て立っている人を配置するとかねぇ。 「花のワルツ」ももう少し衣装を工夫&男性を増員でお願いしたいです。ちょっと寂しい…。
【3幕】 (第1場)
3幕でようやくマラーホフ王子と対面できました。(ヘアはいつもより金髪に見えた?) 《村の娘が花を摘み戯れている。そこへデジレ王子が狩の途中で通りかかる》 娘達はすぐに立ち去り、憂いの表情を湛えた王子マラーホフの見せ場である、メランコリックな森の幻影の場面になりました。 さすがにマラーホフの演技は、その場の世界に浸りきった風情で、踊り以上に演技で魅せてくれます。歩いているだけでも王子様だわ。
ただ、「東バ」版のこの場面、あまりにも“簡易”という感じ。 舞台を彩る美術の絵がへたでショボイ。(森という感じでもなかった)
王子にお付きの人がおらず、唐突に一人きりで現われるのが不自然に映ってしまう。(したがって、他の版では登場する伯爵夫人とかは出てきません)
リラの精がオーロラ姫の幻を見せる場面での“コール・ド無し”は折角美しい舞台にする要素なのにもったいなかったです。 ロマンティックなメロディーにのせ、リラの精と森の精(コール・ド)が登場し、王子が幻のオーロラ姫に触れたくてもなかなか触れられないもどかしさ…。 やっぱりこの場面ではコール・ドが必要だと思うのですが…。
こうなったら、たっぷりと主役たちの美しさを堪能するしかない、とばかりアダージオを観ましたが、リラの精の終始ふわっとした幸福そうな表情が気になって意識がそちらの方へ…。 いくら善良の精だからといって、いつも同じ表情というのはなぁ。 王子を導くのであれば、深みや威厳を感じさせるとか、何かやり方があるのではないでしょうか。でも踊りはまろやかで可愛らしい雰囲気の人でしたけど。 そういえばオーロラ姫は1幕の時の衣装でした。
《そして「パノラマ」の音楽にのり、姫の呪いを解きにリラの精に導かれ旅立ちます》 ここで何名かの、紅葉した木々を思わせる衣装を着た“森の妖精?”(胸に葉っぱが付いていた)が登場し王子と踊りながら移動していました。 (なぜ、先程の幻の場面でこの人たちを出さなかったの?ここで登場させるくらいなら…)
(第2場)
《オーロラ姫の眠っている城に到着した王子。カラボスとの戦いに勝利し、姫にくちづけして眠りから覚ます》 戦いは結構あっさり勝利していました。カラボスも痛手をおったようには見えませんでしたが、最後に“蜘蛛の糸”(昔、ゴダイゴがよく投げていたやつ。ワカリマス?)を投げつけ、元気良く?立ち去っていきました。 そして姫が眠りから目を覚ましたら、あっという間に結婚式の場面。
(第3場)
特にお目見えみたいなゴージャスな始まり方はせず、【宝石の精たちの踊り】から。 ここは女性ダンサー4人で踊るヴァージョンです。 たまに3人で踊るところもありますが、衣装も華やかで、“ダイヤモンド、サファイヤ、金、銀”と揃っている4人バージョンの方が私は好きですね。 1幕で妖精を踊った2人も再び登場。皆、きびきびとした踊りで、テクニックを生かして充分に魅力を発揮していたと思います。楽しく拝見出来ました。
【青い鳥のパ・ド・ドゥ】にはやはり1幕で妖精も踊った小出領子さんと大嶋正樹さん。 これが、結構素晴らしい。特に、大嶋さんのジャンプの高さには目を見張りました。 それにとても柔らかく伸びやかで、見ていて気持ち良かったです。 プロフィールを見たらワガノワバレエ学校に2年間在学し、ルジマートフを育てた事で知られるG・セリュツキー氏に師事し、ペテルブルグのマールイ劇場(日本ではレニングラード国立バレエ)で約1年踊っていたとの事。なるほどね…。
【長靴を履いた猫のパ・ド・ドゥ】は、他で見たときはあまり面白いと思えなかったのですが、「東バ」の高村さん、古川さんの表情豊かでキュートな演技が楽しかった。 マスクを被るところもありますけど、表情が隠れては魅力が伝わりませんよね。ここのは可愛くて良かったです。
【オーロラ姫とデジレ王子のグラン・パ・ド・ドゥ】 マラーホフの経験豊かなサポートを受けてポリーナは益々輝いていました。 そして日本デビューという大きな舞台に立っても、とても落着いていて無理に力が入りすぎることなく観客に満足感と喜びを与えてくれました。
マラーホフは演技という部分ではさすがに見事に演じていました。ですが正直、このパ・ド・ドゥでは、サポートは優れていると思うのですが、お疲れではないかと考えてしまうほど、いつもの生気が見られません。 確かにパンフに書いてあるインタヴューを見ても、日々の多忙ぶりが載っていましたので、体調面がそれほど優れていなかったのでは? 踊りを終えた時の表情が何とも言えず、晴れやかさが見られなかったですし気になりました。 でも、良くわかりません。私が個人的にそう思ってしまっただけなのかも…。
ですが公演自体はとても満足していますし、お2人の共演を見ることができて本当に良かったと思っています。 また「バレエ・フェス」の時にマラーホフさんにはお会いできますが、どうか近いうち、ポリーナさんの舞台を再び観る事が出来ますように…。(願)
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