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2003年03月24日(月) ■ |
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◆パリ・オペラ座バレエ『ジュエルズ』 ピュジョル、ロモリ、アバニャート、ムッサン、ルグリ、ジロー、マルティネズ |
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すっかり春めいて、暖かい宵でした。『ジュエルズ』という演目の予備知識もあまり無いまま、会場の東京文化会館に向いました。 ガラ公演と違って、全体を見たほうがいいバレエには向かないと思われる、オケ後ろの見上げる体勢の席で鑑賞となりましたが、ソリスト個々の表情や息遣いを充分堪能しました。
【エメラルド】音楽:フォーレ
《プレリュード》(ピュジョル、ロモリ、コール・ド、) 幕が開くと緑の世界。ラクロワがデザインした衣装をまとったダンサー達は、さながら深い海の中にいる幻想的な人魚のよう…。キラキラと輝く宝石を模したラインストーンの部分は、鱗が輝いているみたい。フォーレの美しく少し儚げな音楽は夢の中を彷徨っているようです。
エメラルドに登場するダンサーは、割と体格の良い人が多く、ふっくらというより、筋肉が上半身についてしまった感じで、オペラ座の人は、皆こうなのかと思ったら、後で違うことが判明しました。ちょっと安心。ここの幕では最後までゆったりと、リラックスして楽しめました。
《糸を紡ぐ女》(ピュジョル) ピュジョルって愛らしい。動きは素晴らしいのは当たり前ですが、表情が何とも良いのです。身体も柔らかく動けてましたが、時々、少女のように見え、音楽と戯れている感じがしました。
《シシリエンヌ》(アバニャート) すごく気に入りました。ピュジョルと対照的に大人っぽく女らしい印象のアバニャート。大変柔らかで、音に狂い無く踊ってました。美しかった。彼女は観客を引き付ける“何か”を持っていて、この先もっと大輪の花を咲かせるのではないでしょうか。拍手や歓声も一際浴びていました。
《パ・ド・トロワ》(ユレル、カミオンカ、カルボネ) 女性2人、男性1人のトロワで軽快に踊ります。カルボネ君のチャーミングさに目が一点集中。ラテンっぽい弾けるような明るいパーソナリティは、踊りの喜びにみち溢れて見えました。 途中、アポロ風な動きに見えたりしましたが、楽しげな雰囲気で今までとは違う味付けになってます。
《第1パ・ド・ドゥ》(ピュジョル、ロモリ) 近くで見たせいか、ロモリの足の太さばかり目がいってしまいました。このような作品ではもう少しエレガントさがあればなぁと…。
《第2パ・ド・ドゥ》(アバニャート、パケット) アバニャートの大人の味わい。パケットは彫刻のような整ったお顔で、踊りも上品な印象でした。やはりしっとりとして綺麗でした。
《スケルツォ》(全員) 再びコール・ドも含め、早めの音楽で様々なバリエーション、フォーメーションで艶やかに舞います。エメラルドは、とりわけ腕の動きの柔らかさを印象付ける踊りだと思いました。 個人的には、アバニャート、アイドルとしてカルボネが気に入りました。
【ルビー】音楽:ストラヴィンスキー (ムッサン、ルグリ、ロンベール、コール・ド)
粋で、ヴァイタリティー溢れ、ユーモアもあり、可愛らしくセクシー。 印象的な動作を繰り返したり、生き生きと現代的な動き。背景もグレーの中に鮮やかなルビー色の変6角形が中央に大きく浮かび上がったものです。 オペラ座では、上演回数もルビーが飛びぬけて多く、踊りのスタイルも、ここのダンサーの個性にもピッタリはまっているように感じました。登場するダンサーの体形もエメラルドより、すっきり引きしまってシャープな動きに合っています。
ルグリは、いつどんな時も期待を裏切らず素晴らしいのですが、今回もはじけていて若々しくキレやウィットがあり良かったです。登場した瞬間から周りから際立ち、明るく輝いていること!!
それと、今回特に感心したのは、デルフィーヌ・ムッサン。ベテランだと思いますが、まず、ここまで体形が研ぎ澄まされている女性ダンサーは見たことありません。近くで見たので、その美しい筋肉のつき方にビックリしました。踊るためにあつらえた、最高のF1のような仕様とでもいいましょうか。もちろん踊りも粋そのもので、バランシンスタイルをシャープでセクシーに体言していました。 それに、とにかく動けているのですね。2人は本当に良かったです。
ロンベールの踊りのパーツは、とにかく強烈な個性を必要とします。優しい、繊細とは逆の女性の持つ強さを示すような…。口角の下がった強そうな顔立ちから、迫力ある体型もよく合っていたと思います。この幕は、途中、早いテンポの音楽が途切れずに、次々とダンサーが踊り比べのように入れ替わり、どんどん盛り上がっていきます。はじける躍動感が見ていて楽しいですね。
【ダイヤモンド】音楽:チャイコフスキー
(ジロー、マルティネス、コール・ド)
今までと、全く雰囲気が変わり、ロシア的な“クラシックバレエ”の美しい世界へ。 プティパ振り付けの有名な作品のオマージュのようで、白鳥、眠り、ライモンダ…と見覚えある動きが次々現れてきますので、思い起こすのも面白かったです。
幕が上がるとチャイコフスキーの華麗な旋律と共に、白と銀を基調としたクラシックチュチュのダンサーがずらりと現れ、先程までと同じバレエ団かとばかりに、より繊細なスタイルで美しく踊ります。体型もこの幕ではさらにほっそりとしたコール・ドで、今までと違った印象をより強く感じてしまいました。この幕に登場するダンサーは、男女とも、とりわけ美しかったです。 背景は一面水色で、上部にきらめく銀色の飾りが品良く横に雲のように流れた感じのものでした。
主役は、前からお気に入りのジローとマルティネス。2人は、大変背丈が高く、周りとは迫力が違います。 ジローの個性に、この「ダイヤモンド」は合ってるとはあまり思えませんでしたが、完璧な古典作品ではないので、アプローチの仕方は興味深かったです。あえて、絶対に似合いそうな「ルビー」をはずした日を私は選びました。
久々に見たジローは、間近で見たせいもあり、圧倒的に大きくて、胸、背中など、やたら逞しく、リフトされる時など、正直重そうに感じてしまいました。 でも存在感と煌めきいう点では、他のダンサーにはない独自の個性が光っていて、本当に早くエトワールの称号を与えて戴きたいです。 全体の舞台を背負っていく力を持っていると感じますが、今回はかなり後半スタミナ切れ気味で息が上がって辛そうでした。確かにこの踊り、休みなくかなり大変そう…。でも好きなダンサーです。
マルティネスはなんて優雅でエレガンスに満ちているのでしょう。無理矢理なキメを強調したり、やりすぎな点がなく、あくまで自然に流れるように踊っていました。本当に好感の持てる美しいダンス。体型も背は高いのですが、腰から脚のラインが大変美しく、メチャメチャ気に入りました。
でもこのバレエ団、エトワール以外でも、ダンサーのレベルが非常に高く、そんなに頂点のダンサーと差がないと思いました。ジロー、アバニャート、ムッサン、ドラノエ、etc…、数え切れないですよね。主役でも遜色無い人が…。
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