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2003年03月01日(土)
◆Adventures in Motion Pictures『白鳥の湖』(ソワレ) ジーザス・パスター、アンドリュー・コルベット、他


スワン&ストレンジャー: ジーザス・パスター
王子: アンドリュー・コルベット
女王: エマ・スピアーズ
執事: スティーブ・カークハム
ガールフレンド: フィオーナ=マリー・チヴァーズ



雨降りの土曜日、公演会場オーチャードホールへ。
ソワレの開演に間に合うように渋谷に向いましたが、山手線が事故の為、電車の運転が止まっていたようで、駅構内は人で混乱してました。私は何とかたどり着きましたが、放送で少し開演を遅らせるとの旨のアナウンスがなされていました。あせった人も多かったのでは…。

AMPの『白鳥の湖』、この時の“白鳥”はジーザス・パスターと配役表に書いてあり、やっぱりというのと少し残念というのが最初の正直な感想でした。本当にごめんなさい。
でもまぁ、作品の良さを知っていた為、期待しながら開演を待ちました。

さて、始まると、最初から面白さにグイグイ引き込まれてしまう素晴らしい作品。
もう少しこうすればなぁ、などと思うところがなく、完成度の高い内容ですし、イギリス的な社会文化が垣間見られるのも魅力的に感じます。
あと、不思議ですが、使用されているチャイコフスキーの『白鳥の湖』の音楽が、古典のものとマシュー版とでは内容が全く違うのに、ピタッとはまり見事です。
最初のワルツの音楽が終わるくらいで、母としての女王の性格や、愛情に飢えている王子、細かいところまで良く伝わるのも凄い。
美術、照明、衣装の完璧さにはひたすら感心するのみ。音楽も生オケではなかったですが、聴き辛くなく良かったです。作品の出来について文句なしに楽しめました。

アンドリュー・コルベットの王子はオーバーな表情や演技をせずに孤独感や満ち足りなさを表し、常に周りに気を使い物事をだんだんと溜め込んでしまうようなタイプに見えました。
そうやって耐えに耐えて爆発したのが、3幕の「宮殿の広間の場」の女王に拳銃を向けるシーンの演技。そこまでの高みにじょじょに持っていく凄まじさがとても気に入りました。
その後の精神が崩壊していく様子も見事で、とても感情移入してしまいます。もう母性本能くすぐられまくりで、助けてあげたくなってしまいました。

また、女王役のエマ・スピアーズが素晴らしい。幾つになっても、女王という立場でありながら“女”を捨てないぞという雰囲気、冷たく時に高圧的に見えても、色香たっぷりでいい味出してました。
女王は王子を立派な王として育てたいが為に、あそこまで冷たく王子を突き放したのか解りませんが、最後に王子が亡くなった(のよねぇ?)時の演技は、たしかに愛があったと感じさせるものでした。
姿かたちも大きめな人で、ダンスシーンなどはとても迫力ありましたし、あのツンとしたメークや表情しぐさ、キッチリはじめから決められた演技方法だとしても、はまり具合がいいですよ。

ガールフレンド役のフィオーナ=マリー・チヴァーズは、もうかなり気に入ってしまいました。
金髪の可愛らしい方で、演技のいたるところ、一つ一つの表情が魅力的で見入ってしまいました。
映像版では気にくわない役だったのですが、今回その可愛いことといったら…。(私的には「ビバ・ヒル」初期のドナちゃんに見えた)
彼女は形ばかりで愛の無い王子の生活の中では、型破りな自由の象徴、王子がかかわった人の中では、人間らしく普通に振舞う唯一の存在。
とりわけ魅力的に見え、重要で深い役だなと実感しなおしました。
3幕では彼女を見下した女王に対し、あんたなんかに屈服しないぞという態度でお辞儀をするあの演技、「いいぞ!」と応援してしまいました。
ホント彼女いいですよ。

スワン&ストレンジャー役のジーザス・パスターですが、日本では多分存在をあまり知られていないということで、私みたいな「白鳥」=アダムの印象を強く持っている観客達に、アダムと全く違った彼の個性で魅せなければならないという大変な責務を感じて公演に挑んでいるだろうと思われます。
正直、キャスト発表していたら、違う3人3様の白鳥をそれぞれ買って見てもいいと思ってましたが、1回だけ観にいくのでしたら、知らないジーザスよりもアダムで是非と思ってしまう。
キャストの当日発表というのは誰が出るか解らない訳ですから、何度かで行ってもいいかなと思っている人も、手が出せなくなってしまうシステムですよね。

ジーザスの白鳥の踊りはキレというよりにバネがあり、アダムのような鋭さや神秘的というより生命感を感じさせる印象です。見た目的には、身長はそんなに高くなく、肩から腕にかけてとても細くて長さはない、胸筋はあまりなく胴回りはポコッとあって少し不思議なスタイル。誰とも違う体形。
出来れば“男”、“魔をもつ生物”なんて感じにセクシーさを見たかったかなと…。
良い人に見える風貌なので危険な雰囲気もほしかったと思います。
踊りの印象は柔らかく伸びやかです。3幕の時はラテン系アウトローのような感じがしましたが“美”という点と、“皆を魅了する”ということに関しては私の好みとは少し違うのですね。
まぁ、あくまで私的好みの問題ですが…。 
でもとっても頑張っていて好感は持てました。
特に最後のカーテンコールの満面の笑みは忘れがたい印象を残してくれました。

まだ、公演の日程は残っているようですが、見た人が、また買い求めるということでチケットは、ほぼ残ってないようです。 
再演を希望するのみですゎ。
どうか是非お願い!!

*後日、追加公演の券を手に入れました。やったー!