ヒトリゴト partIII
 Moritty



月命日

2005年01月22日(土)



幸福の最大の敵は後悔である。そう言ったのはトルストイだったと思う。その通りなのだろうけど、母がこの世を去ってひと月経つが、後悔をしなかった日は一日としてなかった。

母は食べることが大好きな人だったが、去年の11月初めのころから食事もすすまなくなり、おまけに酷い便秘に悩まされていてあまり食べていなくなっていた。そんな母だったのだが、その日はとても良く食べた。便秘が治ったわけでもない母があまりにも良く食べるので逆に心配になり、私は「もういいんじゃない?食べすぎじゃない?」と言った。母は「そうだね。お母さん、まるで馬鹿みたいに食べてるねぇ。もう止めよう。」と言って食べるのを止めた。今思い返せば、それが、母の最期の食事だったのだ。その翌日から、意識のレベルが急に下がってしまい、誤飲の危険から口からの食事はできなくなってしまったのだ。母は食べるときはいつも幸せそうな顔をした。あの時の、最期の食事をしている母の顔を思い出すと、なんで思う存分食べさせてあげなかったのかと後悔の念に苛まれる。振り返れば、そんなことばかりだ。母に謝りたいことやお礼を言いたいことはこんなにたくさんあるのに、伝えられない。永遠の別れというのは、そういうものなのだ。

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