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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2007年05月19日(土) --

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『夜を抱きしめて』

アイダホのものすごい奥地に、山々に囲まれた、行き止まりの村がある。 ケイト・ナイチンゲール(!)は、平和だったはずの、その名もトレイル・ストップでB&Bを営んでいた。しかしある日、村はマフィアの手先によって包囲され、銃撃が始まった。ケイトたちは巻き込まれた、生死のかかったサバイバルと、最強のロマンスに。

「アヒルのように大きい上唇」も魅力のひとつである未亡人のケイトは、双子を連れてこの村へ移り住んだ。登山が趣味で、ここには夫とも旅行で訪れたことがあった。都会よりも女性が独りで収入を得るには暮らしやすくて、4歳の元気な男の子たちにとってもいい場所だと、移住を決断したのだった。

村には便利屋の男がいた。カル・ハリス。ケイトにはほとんどものを言わないし、会えばすぐ赤くなってしまうが、双子にとってはあこがれの存在。実は元海兵隊員、しかも部隊屈指の底力をもつ戦士。出会って3年にもなるというのに、仕事と子育てに追われるケイトはカルを男性として見ていなかった。が、しかし。凶悪で無茶苦茶な事件によって、すべてが逆転し、そのなかには二人の関係も含まれていた。

マフィアの裏切り者が持ち出したデータを奪うために、橋を落として村全体を封鎖し、孤立させるという乱暴さは、リスクを考えれば確かにおかしい。が、敵にだってバカ者もいれば、裏切り者もいる。村人は村人で、町の大人しい連中とは違う強者ぞろい。そういう設定だから、情況的にはハードなんだけれど、全編、リンダはかなりの笑い爆弾を散りばめている。最後の一行も、ちょっと映画的で、よく効いた。

これまで女王リンダの描くヒーローは、長身でマッチョで、やたら目立ちまくるという外見的特性が必須だったのだが、今回はちがう。というか、実際はかなりのタフガイにもかかわらず、3年間もの間、カルがケイトの目に、やせて目立たないシャイな便利屋として映っていたというのが、いつもとちょっとちがっている。見ようとしなければ、そんなものなのかもしれない。ともかく、ケイトの世界はひっくり返った。あるとき急に間仕切りのスクリーンが上がって、隣にいる人物が好ましい男性だったと知らされるのは、ちょっとした衝撃である。

並行して進むもう一組のロマンスがある。カルのいた部隊でかつて隊長をつとめていた、村の山岳ガイド、クリードと、ケイトの友人である元修道女のニーナ。どちらのカップルもそうだけれど、相手を気づかうということさえできれば、たいていのことは大丈夫じゃないかと思わされる。言葉が必要でない場合のサインも含めて。

今回悪役のひとりとして登場したゴスという男、ひょっとしたらまたどこかで?と思わされる憎めないところもある。リンダは今まで悪役を使い回したことはない(死んでしまうからだろうが)と記憶しているが、新しい試みもありうるかもしれない。ある意味、ゴスは正義の人であり、二組のカップルにとって愛の天使でもあったわけだし。(マーズ)


『夜を抱きしめて』著者:リンダ・ハワード / 訳:加藤洋子 / 出版社:二見文庫2007

2004年05月19日(水) 『しゃばけ』
2003年05月19日(月) 『裏切りの刃』

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