HOME*お天気猫や > 夢の図書館本館 > 夢の図書館新館
女には、力も権力も支配力もない。運命が、わたしたちを 自分では変えられない情況に置く。わたしたちはあやつり人形と 同じで、糸を引かれれば動かなければならないの。 (引用)
まったくそのとおり、などと相づちを打つようになったのは 年齢のなせるわざだろうか。少なくてもかつてはそんな風には考えられなかったから。
原題は『Highlander』。 ロマンス小説が読みたくなって、ふと手に取ったヒストリカルロマンス。 舞台は原題にあるように、スコットランド。イングランドとフランス、そして スコットランドの政治的な関係がそのまま、ヒロインたちの苦境でもある。
歴史的な陰謀劇をのぞく面白さもあれば、人生を学ぶ言葉にも出会い、 そして何よりも濃厚なロマンス。 カヴァーに「全米の批評家から絶賛された」と書いてあった理由もうなずける。
章ごとにシェイクスピアやバーンズなど、古典の大御所の言葉を引用しているのも心憎い。 スコットのアイヴァンホーからも適切な引用がされていた(笑)が、 これは他の作家にくらべると状況説明に過ぎたかも。 著者はヨーロッパを舞台にしたヒストリカルものを得意とするアメリカ人。
ヒロインは生粋のお姫様で、ブルボン王家の血を引くソフィー。 意に沿わぬ婚約から逃れるため乗った船が難破し、ハイランドのクランを率いる ジェイミー・グレアム(モンリー伯爵)と出会い、恋に落ちる。
最初が浜辺で半裸、というあたり、 とっさに記憶喪失を演じてしまったため、真実が言えなくなってしまうあたり、 ジェイミーに凄腕の婚約者がいるあたり、展開は『人魚姫』を下敷きにしているらしい。 もっとも、ソフィーが逃げて行こうとしていた国は、アンデルセンの国デンマークではなくて ノルウェーだったのだけれど。
まがうことなき悪役のロッキンガム公爵も、最後は翻弄されて気の毒ですらあった。 ジェイミーの弟で、ジェイミーの婚約者の性悪美女ジリアンに肩入れしていたカルムの恋情については解決されていなかったし、ジェイミーの母親についても決着は見なかったが、ひょっとして続編などあるのだろうか、と期待しているところ。 (マーズ)
『流れついた紋章』著者:エレイン・コフマン / 訳:後藤美香 / 出版社:MIRA文庫2006
>> 前の本 | 蔵書一覧 (TOP Page) | 次の本 <<
管理者:お天気猫や
夢図書[ブックトーク] メルマガ[Tea Rose Cafe] 季節[ハロウィーン] [クリスマス]