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人は予言的に感じとり、決心した通りにはなかなか 生きられるものではありません。そういう意味では、迷いも多いし、人は弱いものだと 思いますけれども、彼女はかつての決心通りに、見事に最後までジャーナリストという仕事をやめようとしなかった。(引用)
本書のあとがき「千葉敦子さんを偲ぶ」に、澤地久枝が書いている。千葉敦子に弱さがなかったとは思わないが、不安は不安として抱えながらも、後悔をしない生き方を尽くすことは、不安の対極にある潔い決意の結果であったはずである。
千葉敦子の他の著作に比べると薄く感じられる文庫本だが、東京からニューヨークに移住してのち、 再発・再々発したガンと戦う治療レポートが本書のテーマである。
「昨日と違う今日」というのは、ニューヨークでは一日として同じ日がないという実感と、単調で停滞した生活は絶対にできないという情熱がそのままタイトルになっている。
彼女は治療のために入院したり、仕事や生活の方法を変えるといった受身の闘病をよしとしなかった。自宅で通院治療を受けながら、身内以外の(ニューヨークにいるという意味で)友人たちに支えられ、ジャーナリストとしての使命を果たしつづけた。 どこを読んでも、誰かに寄りかからない生き方を選んだ主人公の思いが、わが身に痛い。
この痛みは、私が駆けだしのころ読んだ、人生の大先輩としての千葉敦子ではなく、そういう風にしか生きられない人への、同志のような共感がもたらすのだろうか。
キャリアの前半は英語で記事を書いていたという彼女の仕事を私は知らず、著作の一端を知るのみである。誰かが翻訳して編纂し、出版してくれないだろうかと願うのは私だけではないだろう。せめて日本語で書かれた記事でも、まとめられることを願う。(マーズ)
『昨日と違う今日を生きる』著者:千葉敦子 / 出版社:角川ソフィア文庫1988
2004年03月17日(水) 夢の図書館 春のお休み
2003年03月17日(月) 「象と耳鳴り」
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管理者:お天気猫や
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