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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2004年06月29日(火) --

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『遠い朝の本たち』

ナルシアの本棚から借りてきた本。

『コルシア書店の仲間たち』など、数々の名著で 本好きを唸らせる知的な文章を残した著者が、 子どもから大人になるまでの季節に出会った本たちのエッセイ。 戦争の色に染まってしまいそうな日常を シャットアウトする力を与えてくれる本もあれば、 少女が大人への道を歩き始めるマイルストーンもある。

幼いときの読書が私には、 ものを食べるのと似ているように思えることがある。(引用)

自分をとりかこむ現実に自信がない分だけ、 彼女は本にのめりこむ。 その子のなかには、本の世界が夏空の雲のように 幾層にも重なって湧きあがり、 その子自身がほとんど本になってしまう。(引用)

本を食べて大人になった人ならば、 須賀さんの言う意味がしっくり来るにちがいない。 大人になったからといって、本を食べるのを やめられるわけではないけれど。 須賀さんがお母さんに注意されたように、 「本に読まれる」ことも、他人事ではないけれど。

長じて希な文学者となった女性の、 本との関わりや想い出もさることながら、 子ども子どもしていた少女から思春期へと移り変わる 瞬間の気づきや予感といった感受性は、果実の みずみずしさをともなう。 自分に起こったそんな感性を、 しずかな大人の女性のまなざしですくいあげるエッセイには、 タイトルに象徴されるような、遠くて、 内にありつづけるノスタルジーが満たされている。

蛇足だが、「ひよひよ」という形容詞を、 須賀さんが使っていたのは驚きだった。 既読の『コルシア書店の仲間たち』には そんな言葉はなかったはずだから、私が「ひよひよ」を 好んで使っているのは、須賀さんの影響ではない。 他に言いようのない表現として、 世の中には、「ひよひよ」なものがあるのである。 (マーズ)


『遠い朝の本たち』著者:須賀敦子 / 出版社:ちくま文庫2001

2001年06月29日(金) 『永遠の仔』

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