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リンダ・ハワードは、少女時代から『風と共に去りぬ』を愛読し、 南北戦争を生き抜いたヒロイン、スカーレット・オハラを 夢見ていたという。正しくは、レット・バトラーと スカーレットの物語が、ハッピーエンドとなることを 願っていたのにちがいない。
そして、リンダの数ある著作のなかでも、まさに 『風と共に去りぬ』への最高のオマージュといえるのが、 『レディ・ヴィクトリア』、本書である。
戦争で没落した名家の令嬢ヴィクトリアはスカーレット、 両親を殺した悪党に復習するジェイク・ローパーは、 レット・バトラー。 しかも、ヴィクトリアが金のために嫁いだ相手こそ、 ジェイクの敵、マクレーンだったのだ。 ヴィクトリアは、未亡人のいとこ、美しいが人を惑わす妹を連れ、 大牧場の女主人となる。牧童として雌伏し、復讐の刃を研ぐ ジェイクと惹かれあいながら・・・
リンダのミッチェルへのリスペクトは随所に感じられるが、 なかでも圧巻なのは、有名な、レットがスカーレットを 抱き上げて階段を一段とばしに二階へ駆け上がる場面。 ジェイクもヴィクトリアを軽々と抱き上げ一段とばしで 二階へ運ぶのだが、 当然ながら、ロマンス小説の女王リンダの描写は、 ジェイクがドアを蹴って閉めた、そこから後が本番である。
ただ、原作を読み返すと、レットは階段を一段ずつちゃんと 上っているのだった。ドアのことにも触れていない。 つまり、一段とばしは、映画の記憶らしい。 バタンと閉まるドアも。
ついでにくらべれば、問題の(というより有名な)キスシーンは、 原作では階段の踊り場で抱き直して、だったが、 リンダは、階段を上がる前に、1階の部屋で。 まあ、そのほうが自然ともいえる。
ヒロインが二人とも、「ベッド」という単語を含んだ 情熱的な言葉を投げつけられるのは同じ(笑)。
そして、今にして納得したこと。 リンダがミッチェルの小説に最も影響を受けたのは、 男性側が、本当に、心底、自分のことを愛しているかどうかを 言葉に出してもらって知ることが、女性にとっては 重要なマイルストーンとなるのだ、ということだと思う。
いままでに読んだ、数え切れないほどのリンダの ヒロインたちは、 自分が本当に必要とされ、愛されているのかどうかを問題にしてきた。 なんとなくそうなのだろう、ではなくて、 はっきりと相手にそれを自覚させ、伝えさせてきたのだ。 スカーレットがそのことにこだわり、 逆にいえば、そのこだわりでつらい思いをしたように。
アメリカ南部で生まれ育った二人の女性、リンダとミッチェル。 南部女性の強さとやさしさが、彼女たちの血のなかにも 脈打ち流れている。 その血は、世界中の女性読者にも、リンダを通じて 伝えられてゆくだろう。 (マーズ)
『レディ・ヴィクトリア』著者:リンダ・ハワード / 訳:加藤洋子 / 出版社:ヴィレッジブックス2002
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管理者:お天気猫や
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