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ヴェルヌの本を読むのは、小学生以来だと思う。 何を読んだことがあったのか、どれを映画で見たのかもう判然としない。 同僚の子供さんの愛読書で、すごく面白いということで ちょこっと貸していただいた。 解説によると全体を1/4くらいにダイジェストしたものだそうだが、 ダイジェスト版にありがちなあらすじを追うだけの退屈なものとは全然違う。 それどころか、 読み終わるまでこれが要約された物語だとは気づかなかった。
『神秘島物語』は、『ロビンソン・クルーソー』以来の漂流物のひとつで、 時代は南北戦争の頃、大人四人と少年一人、犬一匹が乗った気球が遭難し、 南半球の無人島でのサバイバル生活が始まる。 何一つ持たない全くのゼロからの生活だが、それぞれが知恵と力を出し合い、 見事なチームワークで様々な困難を乗り越えていく。 実際、たびたび生命を脅かされる危機に直面するので、 一体どうなるんだろうと、大急ぎで、子供のような無邪気さでページを めくっていった。
サバイバル生活は大変だけれど、彼ら五人と一匹はとても仲が良く、 信頼しあっている。本を読みながら、温かな気分になったのだけれど、 それは原作の魅力だけではなく、著者である佐藤さとるさんの力による ところも大きい。 著者のあとがきによると、ダイジェストを担当した佐藤さんは、 子供の頃、この本を「のめりこむように」読み、 「どこがおもしろくどこがよりおもしろいかったか」を熟知していたのだ。 だからこそ、大胆にページ数が削られているにもかかわらず、 違和感がなく、生き生きとした山場の連続を楽しむことができたのだろう。 佐藤さんのこの本への愛情が感じられた。 それがこの本の魅力で、子供向けに書かれたにもかかわらず、 惹きつけたのだと思う。
子供のために編まれたこの冒険文学のシリーズは、 子供のためだけあって資料や解説が豊富で、物語にでてくる動植物や 船の絵が紹介されている。 解説によると、ヴェルヌの生きた時代というのは、幕末から明治にかけて。 日本の江戸時代に、すでにヴェルヌの頭の中にはネモ船長が住み、 空の冒険、地底や海底の冒険、さらには月への冒険と、未来の世界が 息づいていたのだと思うと、しみじみと彼我の違いに不思議を感じるし、 また人間の想像力の果てない力に感動する。 (シィアル)
『神秘島物語』世界の冒険文学5 原作:J・ベルヌ / 著者:佐藤さとる / 出版社:講談社1998
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管理者:お天気猫や
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