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メアリー・ポピンズ、第三作は、本編の最終幕。 四作目の『公園のメアリー・ポピンズ』は 三作までの間に起こった公園でのできごとが短編形式で 描かれているからだ。
これまでもそうだったけれど、 メアリー・ポピンズが何者なのか、 最後まで明らかにはされない。
「せんさくすぎては身の毒!」(/引用)
とメアリーに一蹴されるのだろうが。 あるときは、『絵のない絵本』のお月さまのようにも感じられ、 めぐる季節の精のようでもあり、 星々をめぐる彗星のごとく、とらえどころのないナニー。 そしてあまりにも人間的な、うぬぼれの化身。
ガイ・フォークスのお祭りに帰ってきた、 メアリー・ポピンズ。 いつも何かが起こる場所、桜町通りの公園で、 待ちかねていたジェインとマイケルのもとへ。
今回のタイトルにもあるように、 扉が開くまでバンクス家にいる、と子どもたちに答えたメアリー。 彼女が去っていったのは、ジェインとマイケルが成長し、 人生の新しい扉が開くときでもあった。
物語が幕を開ける11月5日のガイ・フォークス・デーは、 イギリスではハロウィーンに代わる楽しいお祭り。 由来やトラヴァース女史の言葉も、巻末に紹介されている。 (第4巻ではハロウィーンが登場するので、これも楽しみ)
さて、第7章「すえながく幸福に」で 登場する3冊の本。 ジェインの好きな『ロビンソン・クルーソー』と、 『緑いろの童話集』、『マザー・グース童謡集』なのだが、 子どもたちが、これらの本から出てきたキャラクターたちと 楽しいひとときを過ごすというお話。 昔話を集めた『緑いろの童話集』というのは、 A・ラングの再話による、私にとって因縁深い(笑) あの色別シリーズの1冊だと思われる。 今のイギリスではどうか知らないが、19世紀後半から20世紀前半に 育った子どもたちにとって、ラングの本が、マザー・グースと 肩を並べていたことがうかがわれるエピソードだった。
この巻では、いままでになく、子どもたちと、 その青い瞳を通して、言葉にならない理解を交し合った メアリー・ポピンズ。 のりのきいたエプロンのたてる音、トーストの香りとともに、 いつどんなときでも自分に満足している彼女の姿。 マイケルに問われて、『末ながく幸福に』暮らせるかどうかは、 私たちそれぞれにかかっているのだと、メアリーは答える。 幼いマイケルへの答えであっても、大人への答えであっても、 メアリーは同じことを言っただろう。 (マーズ)
『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』 著者:P・L・トラヴァース / 絵:メアリー・シェパード、アグネス・シムス / 訳:林容吉 / 出版社:岩波少年文庫2002(新版)
2002年11月21日(木) 『シルクロードの鬼神』その2
2001年11月21日(水) 『図説 ニューヨーク都市物語』 / 『イスラームの日常世界』
2000年11月21日(火) 『十月のカーニヴァル』
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管理者:お天気猫や
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