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ナルニア国物語、第4巻。 年代としては、6番目。 シリーズのなかでも、過去に一度しか読んでなかったので、 今回が二度目。 ストーリーをあまりにも覚えていなくて、我ながら情けなかった。 しかし、『銀のいす』を、シリーズ中の最高傑作とする読者も 多いと聞く。
時代はカスピアンがすでに老王となった頃。 人間界から訪れた子どもたち、ユースチスとジルに同行して カスピアン王の息子、リリアン王子を探しにゆく「泥足にがえもん」 その人のことですら、名前意外にはほとんど覚えていなかった。
いや、なぜこんなに覚えていないことにこだわるかというと、 ストーリーもキャラクターも非常に神話的で、根源的な輝きを 持っていることに改めて気付いたからである。
沼人の「泥足にがえもん」その人の、 限りなく悲観的でありながら、いざというときに人を奮い立たせる 独特のキャラクターには、ナルニアのもの言うけものや小人や妖精とは またちがった人間味があって、それをまた忘れていた自分にも 何度も言うけれど、あきれてしまう。
ストーリーにしても、ガリバー旅行記を連想させる 巨人の国や小人の国が登場するダイナミックさだし、 終幕にふさわしい地底での大冒険は、 ナルニア国の世界を忘れさせるほど力強く迫ってくる。
それとも、それらは、記憶の底にちゃんと残っているのだろうか。
悪い巨人たちに捕らわれたジルが、身体の小さいのを良いことに、 赤ん坊のふりをして上手に甘えながら逃げ道を探すくだりや、 泥足にがえもんが、私たちの胸に浮かんだものが単なる空想や 願いからだけでなく、どこかの実在から発せられたものであると 信じていけない理由はどこにもないと──心から訴えたことなどが。
読み終わってから、だんだんに、記憶の扉が溶けてゆくような、 奇妙な感覚を味わっている。 (マーズ)
『銀のいす』 著者:C・S・ルイス / 絵:ポーリン・ベインズ / 訳:瀬田貞二 / 出版社:岩波書店1966
2001年09月16日(日) 『イラストレイテッド・ファンタジー・ブック・ガイド』 (参考)
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管理者:お天気猫や
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