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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年08月29日(金) --

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『ハゴロモ』

☆静かな優しさに満ちた、おとぎ話。

久々に、よしもとばななさんの本を読んだ。 「あ、すごく染みるなあ」と、しみじみ感じた。今まで何冊か読んだけれど、今までになくとてもしっくりきた。

よしもとばななさんの本は、自前では『キッチン』と『哀しい予感』 の二冊しか持っていない。リリックで、センチメンタル。 まるで、少女マンガのように読みやすい。 だから、結構な冊数を図書館で借りて読んでいる割には、 するっと、心を滑り落ちてしまって、これというひっかかりがなかった。 『キッチン』と『哀しい予感』は、よしもとばななさんの最初の頃の作品で、 よしもとさんも若く、当時の私も若くて、多分、若さゆえのぎこちなさが、 心にひっかかったのだと思う。 図書館で借りて読んで、しばらくして、文庫本になった時、 そのひっかかりを思い出して、買ったのだった。

その後、よしもとさんの作風が少し変わってきて、 この世ならざるものが、普通に、物語に登場するようになった。 なんか、境界線の向こう側に、ごくごく普通に行ってしまって、 超常的なこととか、霊的なものとかが、当たり前のように語られている。 微妙な読後感であった。 面白かったような、なんだか、腑に落ちないような。

『ハゴロモ』でも、そういう、フシギな現象は、 ごくごく、フツーに語られる。 失恋の痛みと喪失感、それにともなう今まで気がつかなかった疲労感をかかえて、川に囲まれたふるさとに帰ってきたほたる。 子供の頃、私も川のすぐ側に住んでいて、 生活の中にずっと、水の流れる音や、川面のきらきら光る反射光が 生活の中にあったから、冒頭の川のある街の描写には、 とても懐かしいものを感じた。

あとがきに、よしもとさんご本人が書かれていたように、 ふるさとの懐かしい人々、優しい人々、 自分をあるがままに受け入れてくれるあたたかな人々の中で、 ほたるがゆっくりと、癒されていくおとぎの話です。

するすると読めるので、忙しくてくたくただけれど、 ほっとする何かにふれたい時に、おすすめです。 (シィアル)


『ハゴロモ』 著者:よしもと ばなな / 出版社:新潮社2003

2002年08月29日(木) 『いまなぜ青山二郎なのか』

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