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白州正子をめぐる人物というと、文士以外に思い浮かぶのは 師匠だった青山二郎。 『韋駄天お正』という綽名をつけたのも彼である。 かといって、青山二郎が中国・朝鮮・日本の焼きものの 稀有な目利きであるということは知っていても、 それ以外のことは、額が広く目がギョロっとした写真しか 知らなかった。
白州正子も書いているように、読んだからといって 青山二郎が理解できるわけではない。 ただ彼が何を言ったのか、何をしたのかを白州の筆で読み、 そこから先は直感を伸ばすしかないのだ。 自身の本性を自分以外の誰にも明かさず、 自分にもわからない生まれつきの芸術魂を持て余したかのような ひとりの人物の何かをわかろうとするならば。
「お前さんは俺のこととなると、安心してのうのうと書きやがる」 「お前さんが物になってくれないと、俺、困るんだよ」(本文より) と青山のジィちゃんに言わしめた白州正子は、 「変人でも奇人でもない」その人物の為人(ひととなり)を ぞんぶんに記すべき運命を持っていたにちがいない。
私は、焼きものの良し悪しを見分ける知識は全くない。 何の知識もないから、ただ観たまましかわからない。 読んでいると、それで良いのだと思わされるのは 私の勝手な開き直りだろうか。 (その観たままがどう出るかが問題なのだが) 本書に何度か書かれているように、 焼きものの味わい、その魂は、決して写真に撮ることは 叶わない、というのは本当だと思う。
カリスマ青山二郎をめぐる一派は「青山学院」と称し、 青山家に出入りしていた文士のなかには、小林秀雄らに混じって かの永井龍男の名もよく見える。 彼だけは気がつくから、人に迷惑をかけないのだと、 青山は死後発見された日記に残している。 (マーズ)
『いまなぜ青山二郎なのか』 著者:白州正子 / 出版社:新潮文庫
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管理者:お天気猫や
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