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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年06月24日(火) --

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「空飛び猫」

☆猫の背中には羽がある。

『これまで私が愛したすべての猫たちに』
というグウィンの言葉どおり、
愛猫の背中に、天使の羽を見る人はたくさん
いるのだろう。

スティーブン・D・シンドラーの絵は、猫の毛の一本一本を
愛するまなざしだ。
細かいタッチできっちりと描かれた世界は、
このファンタジーの根源にある事実─『つばさのある猫』を、
すんなりと受け入れさせてくれる。
言葉の魔法使いグウィンの寓意に満ちたシンプルな語り口も
もしかすると言葉がいらないほどにビジュアル化されているのだった。
この絵をながめるだけで、グウィンの言葉が浮かんでくると
言えばいいだろうか。

羽のない普通の猫、しかも都会のゴミすて場を家とする野良猫、
ジェーン・タビーお母さん。
彼女の仔猫たちへのまなざしには、
確かに、見慣れぬ翼への不思議な思いや、住みづらくなる
世のなかへの不安、子育ての多忙さなどが宿っているように見える。

今年、猫好きのグウィンが「アースシーの風」で、長いシリーズ中初めて
愛らしい猫を登場させたのを喜んで読んだ。
「空飛び猫」の寓話においても、猫として生まれる存在への
愛情とともに、ゲドの物語でも描かれてきた女性(猫)として
生きることへの共感や、他者との距離を保ちながらも
深く触れ合おうとする哲学を感じる。
ゲドに登場するつばさのある存在、『竜』とはまたちがった意味で、
太古から人のそばにいながら、人智をこえた瞳をきらめかせる『猫族』。
猫の瞳孔が、まるで爬虫類のように中央の細い線になったとき、
彼らは竜のことばを語りかけているのかもしれない。
そういう意味では、ゲドと空飛び猫の物語は、シリーズである
ことも含めて、双子の姉妹かもしれないのだ。

4匹の仔猫たちの冒険旅行を描いたこの第一作目は、
『もっと続きが読みたい』という熱心な声を受けて、
次々と続編が登場している。
(マーズ)


「空飛び猫」 著者:アーシュラ・K・ル=グウィン / 絵:S・D・シンドラー / 訳:村上春樹 / 出版社:講談社1993

2002年06月24日(月) 『映画は予告篇が面白い』

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