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☆アリスな安房直子。
「あなたは、なんでも知らない知らないと
言うけれど、本当に、何も知らないのですか」
(/引用)
などと、うさぎの親分に問い詰められた日には。
9歳の私は、まだ幼い妹と森へゆき、
もの言う不思議なうさぎと出会い、
私ひとりが、彼らの世界へ踏み込んでしまう。
トランプの中の家に。
そこにはうさぎのお屋敷があって、
私の追いかけていったうさぎは、
そこの料理人だったのだ。
安房直子の他の話とは、ちょっと毛色がちがう。
パタンパタンと世界がひっくり返される魔法の瞬間は
やはりあるのだけれど、この短編は、どこか元気がいい。
といっておかしければ、独特の影がほとんどなくて
ちゃんとハッピーエンドになっているし。
アリスの世界を下敷きにしているといっても
トランプやお茶会などのモチーフの合い間には、
安房直子ならではの視点が入る。
草原にちらばってトランプをさがすうさぎたちを見た私が
「ああいうのを、むなしいっていうのね」(/引用)
とつぶやくあたりは、
その情景が目に浮かんで、ちらちらしてしまった。
この本のあとがきで、安房直子は書いている。
ふしぎな世界の入り口は、どこよりも
深い森や山のなかにこそあるのだと思う、と。
その緑の樹々に見えないものたちが隠れていて、
風のひと吹きで、たちまち踊り出てくるのだと。
(マーズ)
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