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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年06月04日(水) --

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「こころ晴れ晴れ ほっこり曜日」(その2)

☆暮らしのなかに、いつも元気の種。

先日ご紹介した本が、ついに発売なった。
本を読むことを泳ぎにたとえれば、
足の立つ浅瀬もあれば、底の知れない大海原もある。

コピーライターならではの演出で、ときに東北弁を交えながら
ユニークな視点で語られる話題は、笑いをちりばめた体験談や雑学から
ほろっと涙する真面目な話までレンジが広いが、
その海域は、とても不思議な海である。

どこまで深くもぐっても、私たちを溺れさせたりしない。
体温に近いあたたかさで、底まで光のとどく海。
はてしないけれど、迷い込んだ船を受け入れ、傷んだ帆が
いつのまにか癒されている、そんな潮風を吹かせている。

こころならずも、人生の舞台で弱い立場にいる人、
さらには、もっと行き詰んでしまった人。
いつそうなっても、おかしくない自分。
なんとなく、過ぎてしまっている一日一日、一年一年。
大事にしたいことを大事にできなくて、あれよあれよと
生きているけれど、ここにこうして『生き延びて』いることは
負けとか勝ちとかじゃないんだな、とうなずかせてくれる。

なさけない自分を否定する矢を胸に撃ち込まなくても、
普遍的なものさし、『ほっこり』で測りなおせば、
過ぎていく今日も、いずれ来るはずの日々も、
明るさの密度は変わっていくのだろう。


表紙の絵は、谷内六郎画伯。
郊外の道を、女子学生が歩いている。ときは春。
そばの電柱の上で、おじさんがひとり、
電線にト音記号をからめている。
五線譜になった電線に、やがて音楽が生まれるのだろう。
もくもくと作業に精を出すおじさんは、後ろ姿。
きいろいヘルメットが、花曇りの空に映えている。

このおじさんの姿こそ、著者が本書を世に出すことで
読者にあてて発してくれたメッセージを象徴している
のではないだろうか。私にはそう思える。

あとがきによると、著者は、大好きな谷内六郎の絵をながめ、
原稿を書く孤独な集中作業のなぐさめにしていた。
本がほぼできあがってから、装丁に谷内六郎の絵を、
という話が編集サイドから持ち上がり、目に見えない赤い糸を
深く感じたという。
(マーズ)
「その1」
「松島エリ公式サイト」


「こころ晴れ晴れ ほっこり曜日」 著者:松島エリ / 絵:谷内六郎 / 出版社:清流出版

2002年06月04日(火) 『風と共に去りぬ』(その2)
2001年06月04日(月) 『人魚とビスケット』

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