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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2001年06月04日(月) --

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『人魚とビスケット』

☆奇妙な味わいの物語。

『人魚とビスケット』−不思議なタイトルである。 ちょっと、ファンタスティックなものを想像したが、 海洋冒険(遭難)サスペンスである。

 第二次世界大戦のさなか、  
避難民をのせた船がインド洋で撃沈され、  
ゴムボートで、運命を共にすることになった四人の男女。  
それぞれ、「人魚」、「ビスケット」、  
「ブルドッグ」、「ナンバー4」と、仮の名前で呼び合う。  
思い出したくもない、恐怖に満ちた、漂流の日々。  

苦しみの果てに、やっと救助され、  
忘れるために月日は流れたのたのに。  
1951年、ロンドンのデイリー・テレグラフ紙に  
掲載された個人広告。  
「ビスケット」が「人魚」に会いたいと呼びかける奇妙な広告。  
忘れたい過去ほど、執拗に、  
平穏を願う現実の日々を、追いかけてくるのかもしれない。  

漂流中の四人に何があったのか。  
今、過去の出来事をめぐって、何が起ころうとしているのか。

この本は、随分前(1955年の作品,1957年刊行)の小説が、 最近、復刊されたものである。 古さは感じない。むしろ、風変わりな味が新鮮ですらある。 書店の本棚には、思いもよらない、おもしろい本が 偶然、手に取られる瞬間を待っている。 手に取り、撫でさすり(!)、実物を愛でる楽しさは、 残念だが、Web上の書店では味わえない。 あの日本屋さんに行って、平積みにされた山を見なければ、 読むことのないままだった。

本との出会いは、必然と偶然。 基本的には、Web上の書店は好きだが、 本屋さんには、本屋さんにしかない、喜びがあるのだ。(シィアル)


『人魚とビスケット』 著者:J.M. スコット / 出版社:創元推理文庫

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