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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年02月17日(月) --

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『ふくろう模様の皿』

☆英国版皿屋敷の怪。

ウェールズの田舎にある古い屋敷と自然を舞台に、 アリソン、グウィン、ロジャの三人が体験する ホラーと伝説に彩られた、大人への通過儀礼の季節。

ある夏、三人が屋根裏で発見した皿には、 不思議な模様が描かれていた。 そこから、たてつづけに不可解なできごとが起こる。 ストーリーの背景には、ウェールズの伝説「マビノーギオン」が 敷かれていて、これは私たちにはなじみのない伝説だが、 とつぜん三人の置かれた現実をおびやかす不吉さを つきつけ、人知を越えた因果現象を呼ぶ根源として 効果的に使われている。

アリソンとロジャは義理の兄妹。 そして、二人とは階級の異なる貧しい家政婦の息子、グウィン。 三人それぞれの抱える若さと未来に控える時間への畏怖、 親の世代との葛藤。

冒頭から怪奇な現象で読者をひきつけながらも、 単なる怪奇譚ではすまさない。 怪奇だけでも作家の秘めた相当な力を感じるが、 特に後半は、普遍的なテーマが傍流となって、 この作品を独特のムードに仕立てている。 ホラーを好きな人、ホラーを書いている人には ぜひ、読んでほしい作品ともいえるだろう。

普遍のテーマとは、少年でも少女でもない年代にさしかかった三人の、 ひとりひとり異なる苦悩の色。 ことに、グウィンへの母ナンシイの無理解は、 グウィンの今後の運命にも大きく関わってくるだけに、 かなり深刻なのだが、グウィンは母に理解されることは すでにあきらめてしまっている。

再婚した家族4人の方はといえば、屋敷内に暮らしていることが 話題にはのぼるものの、姿をあらわすことのなかった アリソンの実母(ロジャの継母)もまた、 なんら子どもたちを理解することはない。

アリソンの義理の父、クライブや グウィンの父は、子どもたちを理解しようと 努力しているようにも見えるのだが。

この対照的な母と父のありかたに、 作家の隠れた意図を知りたいと思いつつ、 ふくろうの飛び交う夜の森が、 今は私のまわりを取り巻いている。(マーズ)


『ふくろう模様の皿』 著者:アラン・ガーナー / 訳:神宮輝夫 / 出版社:評論社

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