HOME*お天気猫や > 夢の図書館本館 > 夢の図書館新館
ロンドンの町かど、赤いポストのとなりに、 ジムの場所がある。 みかん箱に腰掛けて、一日を過ごすジム。 もうすぐ80歳になるジム。 若い頃はずっと、船乗りをしていたジム。
近所の人たちは皆、ジムに何がしかの施しをし、 子どもたちはジムになついている。 なかでも、いちばんの仲よしは、デリー少年。 ジムはデリーに、船乗りの見た不思議な世界を いつでも惜しまず語ってくれる。
ゆり木馬号に乗って、 話をするペンギンや、巨大な海へびに出会ったり、 大波を退治したりする、奇想天外なお話を。
ジムの家がどこなのか(家はないのかもしれない)、 何とか食べていけているのかどうか、 そういう心配も出てくるが、 ともかくも、南国の楽園ではないロンドンの町で、 こうして、「なんとなく」近所の人たちの目に 守られながら、マイペースで暮らしている老人がいるということは、 きっと大丈夫なのだろう、と思うような雰囲気がある。 町の人たちは、手づくりやお古の衣類をジムにあげるけれど、 お金をあげている風ではない。 それに、少なくても、ジムは「施設」の住人ではない。 そして、長生きしたいと願っている。
読みながら、物語の最後には、なにか幕引きの事件が 起こるのではないかと危惧していた。 ファージョンでなければ、 ちがったエンディングもあっただろう。 けれども、ファージョンは、この寓話的な小品のなかで、 最後まで人間を信じる意志を灯している。 福祉の充実した英国人らしい老後への希望をもかいま見て、 あながち夢物語でもないのかもしれない、と思う。
あとがきによると、 読み聞かせにも人気の本だそうである。 (マーズ)
『町かどのジム』 著者:エリノア・ファージョン / 絵:エドワード・アーディゾーニ / 訳:松岡享子 / 出版社:童話館出版
2001年01月20日(土) 『わたしの日曜日』&『とっておきの気分転換』
>> 前の本 | 蔵書一覧 (TOP Page) | 次の本 <<
管理者:お天気猫や
夢図書[ブックトーク] メルマガ[Tea Rose Cafe] 季節[ハロウィーン] [クリスマス]