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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2002年11月25日(月) --

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『うわの空で』

『第44回青少年読書感想文全国コンクール 課題図書』 に選ばれているのだが、 主人公のルーベンも、日本でそんなことになるとは 思いもしなかっただろう(笑) まさに、この本の書き出しのように、

そんなことになるなんて、だれに信じられただろう。 だれにも、絶対だれにも信じられないし、 ぼくにしてみればなおさらだ。(本文より引用)

とうわの空でつぶやくんじゃなかろうか。

イタリアのとあるお屋敷で生まれたルーベン少年が、 ある事件を機に家を飛び出し、 アメリカにいる叔父をたずねて無一文の のらくら旅に出る。その途上で出会った人々や冒険の数々。 …というのがストーリー上の建前なのだが、 不条理で徹頭徹尾受身、かつ透明な無気力と絶望に満ちた 少年の航路は、 少なくても私には、笑って読み飛ばせるものではない。

後の作品、『心のおもむくままに』を先に読んだので、 デビュー作にも同じようなトーンを期待していたのだが、 異文化といってもよいほどの違いがあった。

ただ、ひとつ共通点として感じたのは、 「ことばにみちびかれて人は生きる」、 というメッセージである。

生まれてからずっと、なりゆきまかせに 必死になることもなく生きてきた少年が、 ある日空から降りてきた「ことば」によって、 初めてポジティブになる。 それが良いことかどうかは別として、 スザンナの体験してきた人生においても、 私の経てきたのらくら人生においても、 生まれ持った環境以上に、ある日とつぜん誰かの本で 教えられた「ことば」の力は、強かった。

そういうことをふらふら考えていたら、 ポール・オースターの『幽霊たち』を連想して、 うずもれてゆく人生のただなかにあっても、 どこかに結晶してゆく輝きがあるのだろうと 少し、落ち着いた。
(マーズ)


『うわの空で』 著者:スザンナ・タマーロ / 訳:泉典子 / 出版社:草思社

2000年11月25日(土) 『日本語の磨き方』

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