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涼やかに水をたたえる青いプール。 プールサイド特有の臭いや音の響き。 少年たちの緊張感。 固唾をのむギャラリー。 この物語はそれぞれのシーンが、くっきりと瞼に浮かぶ。 『DIVE!!』は、今時の少年たちの汗くささのない、 さらっとしたスポ根小説である。
第一巻では、ダイヤモンドの瞳を持つ坂井知季、 第二巻では、幻の天才ダイバーの血をひく沖津飛沫、 第三巻では、努力家のサラブレット富士谷要一、 それぞれ、主人公を変えながら、 高飛び込みに打ち込む少年たちの姿が描かれている。
そしてこの最終巻には、 三人の少年たちのオリンピック代表権をかけた選考会が。 いつのまにか、高飛び込みでオリンピックを 目指すことになった三人の少年たち。
それぞれ高飛び込みを始めたきっかけも、 高飛び込みへの思いもスタイルもそれぞれ違ったけれど コーチ麻木夏陽子のもと、 やがてシドニーオリンピックのために真剣に練習を重ねるようになった。 オリンピック出場権を獲得するのはいったい誰なのか?
物語は、まるで試合を見ているように進んでいく。 1章から10章まで各章末に、 競技の第一巡から第十巡までの彼らの得点と順位が示される。 本をめくりながら、彼らの気持ちを追いながら、 早く早く、彼らの得点を知りたいと、どきどきしながらページをめくる。
どの少年にも、葛藤の物語があり、 一筋縄でここまできたわけではない。 つまずきながら、もがきながら、時に高飛び込みに背を向け、 そして、お互いをさりげなく気づかい、 励まし合って、オリンピックの選考会まで進んできたのだ。
少年たちの心の揺れに、心を痛めたり、 彼らの活躍に、ただただ歓声を送ったり。 読んでいるこちらも、誰が選ばれるのか、 誰が落選してしまうのか、複雑な思いを彼らと重ね合わせる。
勝っても負けても、 若い彼らにとっては、オリンピックは一つの通過点。 彼らは、もっともっと先の自分の姿を見つめ、 それを越えるために練習を重ね、大きく飛躍していくのだろう。 これが最終巻ではあるが、本を閉じた途端、 今度は、その後の彼らの活躍も是非知りたいと、 ついつい欲張った思いが湧き上がる。
高飛び込みは、繊細で、シンプルな競技だ。 これらの物語も、シンプルかつ繊細で、 ただのスポ根小説ではなく、カタルシスのある、 「癒し系」の物語といえるかもしれない。(シィアル)
『DIVE!!(4)−コンクリート・ドラゴン』 / 著者:森絵都 / 出版社:講談社
2001年10月01日(月) 『老人力』
2000年10月01日(日) 『クロスファイア』
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管理者:お天気猫や
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