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仲間のねずみたちと一見同じでありながら、 どこか根本的にちがっているねずみの奥さんが主人公。 毎日、他のねずみと同じように暮らしているのに、 彼女の内側には秘密があるのだ。
囚われの鳩にすら、とどかない高さに、 この小さなねずみの魂は、飛翔できた。
たとえ見てしまっても到底わからない世界、 普通では見ることも知ることもできない世界を、 ふと、かすかに感じとる感性。
そういうものをもって生きるということは、 幸せでもあり、厄介のタネでもあり。 ゴッデンも、その、時に重くなったり羽根が生えたりする 荷物を背負っていたのだろう。
ねずみを通して人間を描いたゴッデンの寓話は、 そこはかとなく胸にしみてゆく。 ちいさなネズミでなくても、 人の子であってすらも、星は遠く、理解を超えたもの。 私たちに世界のなにがわかっているだろう。 毎日、食べて眠ることだけでも大変なのに。 本を読む時間がじゅうぶんにあったとしても、 永遠をかいま見る瞬間が時折にあったとしても、 その、属する世界に私たちは暮らすのだ。
淡々と語られる物語の終わりに、 やっと現れる永遠の輪。 今そこにあるもの、与えられたものの大切さを、 人よりすぐれた感受性よりも愛おしむ よろこびが、満たされない思いを埋めてゆく。 (マーズ)
『ねずみ女房』 著者:ルーマー・ゴッデン / 絵:W・P・デュボア / 訳:石井桃子 / 出版社:福音館
2001年09月17日(月) 『イラストレイテッド・ファンタジー・ブック・ガイド』
2000年09月17日(日) 『警告』
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管理者:お天気猫や
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