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ある夏の日、おばあさんが女の子に切り抜いてあげた 5人の女の子が連なった紙人形が、 町のあちこちを旅しながら、 なりたい自分になってゆく。 そのときどきに誰かの力を借りて、そして 誰かに力をあげながら。
マーヒーの作品を読むのは初めてだが、最初のページから すっかり引き込まれてしまった。 「おもちゃ文学」と名づけたジャンルに入るのでは、 と思って手に取った本。 とはいえ、うすっぺらい切り紙細工の人形が主人公では、 どんな風な物語になるの?と少しの不安もあった。
原題は『The Five Sisters』、 それにしても薄ぺらぺらの彼女たちは、確かに、 立派に五人姉妹なのである。 紙切れの人形を主人公にして、ここまでの世界を創りあげる 作家の哲学的思索に、琴線は鳴りっぱなし。
そしてまた、紙人形たちとまわりの世界を描いた イラストレーションの、狙いの確かさ。 人の手で人形が描かれていく様子は、リアルな指先と 単純でコミカルな線の人形の対比が秀逸である。
彼女たちと旅をしてしまったら、もう、軽々しく 人情は紙より薄いなどと言えなくなってしまう。 気ままにクズかごへゴミを放り投げることすら、ためらわれる。
「変わってくのよ、変わってくんだ!」 用なしのものたちは大きな紙ぶくろの中で、そっとうたいました。 (引用)
薫り高い言葉と示唆に満ちた児童文学であると同時に、 生きること、ここに誰かと生命を持つということ、 私たちがあらわれて去ってゆく不思議を読み解く哲学書としても、 本書が広く読まれることを願う。
…ほら、芝刈り機のおそろしい歌が聞こえてくる前に。 (マーズ)
『紙人形のぼうけん』 著者:マーガレット・マーヒー / 絵:パトリシア・マッカーシー / 訳:清水真砂子 / 出版社:岩波書店
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管理者:お天気猫や
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