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子供の時プールで逆立ちして足を突き出して遊んだ人〜。
はい、そこのあなたにあなた。
横溝正史作品のファンですね!
え、読んだ事はなくて、TVで見たのを真似してただけ?
じゃあ名探偵・金田一耕助さんのファンですね!
‥‥という程世の中に金田一ファンが
多いかどうかは分らないけれど、
少なくともミステリの道に進んだ作家の皆さんの多くは
絢爛たる情景と合理的な推理と人なつこい名探偵の
横溝ミステリに大なり小なり影響を受けたのではないでしょうか。
それが証拠に角川書店が「横溝正史生誕百周年記念」と
銘打って出したこのアンソロジー、
参加作家さん達がなかなかのラインナップです。
ハードカバーは高いので滅多に買わない私が、
「九人だから一人200円ちょっとか」と買ったんですから。
我が心の名探偵・金田一耕助にちなんだ短編というお題で、
探偵本人がその「当時」に事件に挑戦する設定の
正統派パスティーシュに挑んだのは
横溝賞受賞の新人・小川勝己さんただ一人、
あとは老境に達した探偵本人の登場するものと、
「キンダイチ」にちなんだユーモラスな探偵さん達に二分されます。
自作のレギュラー登場人物を出演させるいわゆる「夢の競演」ものもあり。
栗本薫さん作品のお馴染み名探偵・伊集院さんなんて、
憧れの先輩に会えてもう感激の涙。
自前名探偵を頭文字だけで噂している北森鴻さんの作品は、
お笑いパロディなんですが、じつはかなり「動機」に感心。
軽妙な赤川次郎さんも軽く流して読めるけど、途中で
「読者への挑戦」を入れてもいいようなクイズになってます。
有栖川有栖作品は火村シリーズのエピソードにしても
違和感はない話ですが、取材先で仕入れたらしきネタが
有栖川さんらしくて心温まりますね。
金田一さんが活躍するような暗い因習に満ちた村が
日本中から消えていく今、柴田よしきさん、菅浩江さんは
唯一「らしさ」を醸し出す舞台としてともに「京都」を選びました。
同じ理由から服部まゆみさんの選んだのは「歌舞伎」、
この作品、トリックよりなにより犯人の造形の恐ろしい事。
しかしなんといっても異色は京極夏彦作品、
自作のレギュラーキャラクターが登場して
本人はそれと知らず横溝ファンに
秘かに受けるような濃い会話をかわし、
思わず笑ってしまうのですが、
金田一ファンで京極作品を知らない読者は
何事かと首をひねるでしょうねえ。
だいたい企画アンソロジーに自作の予告編まで
組み込むような離れ業をする作家は普通いないって。(ナルシア)
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管理者:お天気猫や
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