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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2002年05月15日(水) --

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『ゴースト・パラダイス』

墓地の死者たちと、街の少年たちがくりひろげる、 ハロウィーンの夜の大逆転。 そんな触れ込みと、テリー・プラチェットの名前に 惹かれて古書を取り寄せた。 プラチェットは英国ではベストセラー作家の常連だという。 以前、ファンタジーのアンロジーに入っていた短編で ディスクワールドの番外編「海は小魚でいっぱい」を読んだが、 (2002年03月16日の書評参照) たぐいまれなユーモア作家の作品を、 もっと読んでみたいなと思っていた矢先で、 幸運な出会いと思う。

主人公の少年ジョニーは、死者の一人、オルダーマンに よれば、『見まいとする努力を怠っている』おかげで、 死者が見えるようになった。遊び仲間の少年たちには 彼ら街の共同墓地にたむろする死者たちの姿はまったく 見えないのだが、ともかくジョニーには見えるし、 クセのある死者たちも、そのことを知っている。 いまだに生きていたときの個性に彩られた彼らは、 ジョニーによって、ラジオを知り、テレビジョンを知る。

永劫に平和だったはずの墓地が業者に売り飛ばされ、 檻のような集合住宅が建てられるという計画に、 やがてはジョニーだけでなく、生きている街の人たち 全体の、見えざる意思が異を唱え始める。 実際に死者とつながっているのはジョニーひとりなのにも かかわらず、つながりは連鎖してゆくのだ。 そしてハロウィーンの夜、革命が起こる。

ユーモアのスパイスをまぶして、からっと揚がったポテトフライを 実際に食べてみると、そこには染み出してくる料理人の 手の味わい、ポテト畑の滋養の深みを感じ、 しばし魂は「あちらの世界」をさまよう。

本書は、第一次大戦で犠牲となった、 トミー(トマス)・アトキンズに捧げられている。 …すべての英国兵士を指す愛称でありながら、 どこかに実在したはずのトミー・アトキンズへの共感を込めて。 (マーズ)


『ゴースト・パラダイス』 著者:テリー・プラチェット / 訳:鴻巣友季子 / 出版社:講談社文庫(入手困難)

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