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魔法使いルッフィアモンテが創った「風街」を舞台に、 ありとあらゆる不思議を浮かび上がらせる短編集。
ファンタジーや精神世界の翻訳も数多く手がける 著者による、まさに集大成の趣。 夢の殻、火星の旅人、恐竜の大腿骨、仮面屋、 そんなキーワードにいささか感電する方には 願ってもない美酒となるだろう。 足穂、澁澤、ブラッドベリ、たむらしげる、と言い換えても 大きな誤解はないはずである。 (「完全版」とは、雑誌に発表後、加筆訂正して 単行本として編みなおしたことによる。)
風街は、過去の方角に在る。
街を吹く強い強い風は、 いかにも乾ききったた風である。 文体にもそれが感じられ、読むごとに 軽い眩暈をおぼえつつ眠りを誘う妖しさは、 すでにこの魔法の風に私が 取り込まれつつあるからなのだろうか。
幻想譚の語り部は、マーチ博士。 この街に寄宿しながら、 ときに翻弄され、ときに完全な美に酔い、 街の住人たちのひとりに溶け込んでゆく。 アルコールに溶ける、植物の精の効果にも似て、 また少し、風街は奥行きを増すのだ。
著者はあとがきで、恋愛の要素が少ないのを 残念がっているが、私には、まさに多すぎず少なすぎず、 上澄みが流れたあとあとまで残るようなエッセンスで あったと思われる。 (マーズ)
『風街物語-完全版-』 著者:井辻朱美 / 出版社:アトリエOCTA
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管理者:お天気猫や
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