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6歳の時に読んだ怪奇アンソロジーは 原文の雰囲気がそのまま味わえるように 収録作品の文章にはあまり手を加えていませんでした。 しかし、タイトルのいくつかは子供向けに 分り易くつけ直してあるものがありました。 「ひらいたまど」(サキの「開いた窓」)のように 大抵は漢字をかなに直してあるだけなので問題はないのですが、 中には作者が付けたひねってあったりそっけなかったりする題を 内容を現したものに変えてあったりします。 本そのものが手元にあれば原題も作者も記してあるのですが、 本が手元になかったために原作を探すのに苦労したものもありました。 例えば。
「ふしぎな足音」
古い屋敷に女の人と彼女の父親、彼女の子供が引越して来る。
やがて男の子が「屋根裏部屋に知らない子供がいる」と言い出す。
何も言わないでじっとこちらを見詰めている子供がいるのだと言う。
さて、この話がみつからない。 本邦童話作家小川未明のとある名作に通じるような 詩情溢れる作品だと思ったのですが。 「不思議な足音」と言ったら有名なチェスタトンの短編、 名探偵のブラウン神父が足音を聞くだけで 謎を解く話ではありませんか。 大人には姿の見えない子供が出て来るから 「ふしぎな足音」と判り易いようにつけたのでしょうが、 原題はたぶん全然違うものでしょう。 うーん、どうやったらみつかるかなあ。 そして答えまるっきり思いがけない所からやってきました。
本筋とは関係ない場面で、老人が少年にこんな風な事を語ります。 子供が持っている輝きは大人になると小さくなってしまう。 しかし儂のように死ぬ前の老人では一時その輝きが ぱっと強くなる事がある、 まるでランプの燃え尽きる前のように。 ──原題は「ランプ」でした。
あー!見つけた! なんと、本好きならば知らぬ者はない 英国ミステリ界の女王、アガサ・クリスティの作品でした! 児童書巻末の作者紹介に載っていたはずですが、 不思議なプロフィールの八雲や 変な名前でとんでもない生涯を送ったポーなんかと較べて ちゃんとした女の人だったので印象に残っていなかったのでしょう。 それにしても優れたミステリ作家は皆間違いなく 優れた怪談の書き手でもあったと再確認。(ナルシア)
『検察側の証人(クリスティ短編全集1)』 著者:アガサ・クリスティ / 出版社:創元推理文庫
2000年11月27日(月) 『Spells for Sweet Revenge』(2)
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管理者:お天気猫や
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