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6歳の私にくっきりと記された刻印。 先日紹介した児童向け怪奇アンソロジーの 冒頭を飾り、底知れぬ衝撃を与えた短編です。
好きな話ではありません、猫を虐める話ですから。 しかし「やってはいけない」と思う事を どうしてもせずにはいられないしんり (心理なんて言葉は私は知らなかったと思う)、 お化けかと思ったらちゃんと理由のあったラスト (巻末の作者紹介紹介には探偵小説を作った人とも 書いてありました)、 「ポー」と言う変わった名前の「おさけをのみすぎて しんでしまった(と巻末紹介にあった) がいこくのひと」はすごい、と思いました。 ゴシック風幻想小説家、推理小説の父、 詩人エドガー・アラン・ポーとの出会いでした。
だから後に小学校の先生が 「エドガー・アラン・ポーは日本に来て 江戸川乱歩になったんだよ」と無茶苦茶を児童に教えた時、 思わず私は手を上げて言ってしまいました。 「江戸川乱歩は平井二郎という日本人です。 先生が言っているのはギリシャ系アイルランド人の ラフカディオ・ハーンだと思います。 日本で結婚して小泉八雲になりました」 先生は仰天しましたが、 全部作者紹介に書いてありました。 (八雲は「雪女」「むじな」等が載っていたのです) でもさすがにポーがアル中の末ボルチモアの街角で 凍死した、なんて事までは言いませんでした。 師匠・ポーの名誉のためでなく教室の混乱を避けるために。
『黒猫』に出会ったのは13年後、 大学の英語の授業ででした。 専門とは関係のない教養過程なので、先生も 難しい事はせずに簡単で読み易いテキストを配り、 それさえ読んでいれば絶対大丈夫な試験をして 全員に単位をあげようという思惑です。 やったラッキー。 『黒猫』なら子供の時読み込んだおかげで、 まだほとんど暗唱できるくらいです。 という訳で全く予習もせず試験に向かうと。 教室でしくしく泣いている同級生がいます。 昨夜一人で夜中にテキストを読んでいるうちに 怖くて怖くてたまらなくなり 途中で止めてしまったのだそうです。 ええ、それはまずいよ。 じゃあ内容を話すからね。
いつのまにか。 「極めて奇怪で極めて素朴な物語」を語る私の周りには 固唾を飲んで聞き入る人垣が出来ていました。(ナルシア)
『黒猫・黄金虫』 著者:エドガー・アラン・ポー / 出版社:新潮文庫
『黒猫』/ 青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/
2000年11月26日(日) 『Spells for Sweet Revenge』
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管理者:お天気猫や
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