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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2001年10月05日(金) --

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『霧のむこうのふしぎな町』

霧のむこうに、なつかしい町がある。

知る人は知っているけれど、そんなにメジャーな作品では ないというのが、この本の位置付けだったと思う。 今では一躍記録を塗りかえたアニメ映画の影響もあって、 初めて手に取る人も多いようだ。

この本が、あの『千と千尋の神隠し』にインスピレーションを 与えた本だったとは、本当におどろきだった。 霧のむこうのふしぎな町は、私たち猫やの3人にとって とても、なつかしい町だから。

私たちが、いなかの高校生だったころ。 シィアルが文芸部をやっていた関係で、美術部の私や 絵の描けるナルシアたちが、やや強引な勧誘にあった。 文化祭の演目に、シィアルが選んできた本の紙芝居を つくろうではないか、というのである。

それまでの文芸部は、むずかしい文学的な活動しか していなかったが、一般の人に喜んでもらえるものを つくりたかったのだと思う。 (すでに猫やの原型がそこにあったのかも)

文化祭までけっこうタイトなスケジュールで、 苦労の末にできた本編とパンフレットを用意して、 教室をひとつもらった我々は、 カフェみたいな紙芝居小屋をつくった。 お客さんは、主に小さい人たち─子ども。 どうやって上演したものか、今ではそれこそ霧のなか。 机の前に座っている写真があるので、わたし自身も上演 したらしいのだが。 惜しむらくは、紙芝居そのものも、手もとには残っていない。

不思議な町へ行く主人公は、リナちゃん。 今でも私たちにとっては、くりっとした瞳の、 肩より少しのびた茶色い髪の女の子。 「リナちゃん、サーファーカットだね」なんていいながら。 手分けして何人もでつくるわりに、 キャラクターはわりとすんなり決まったのをおぼえている。

不思議な町には、ピコットばあさんやナータ、イッちゃん、 猫のジェントルマンやジョンなどなど、 世界中の寄せ集めかと思うような、いろんな無国籍キャラが あたりまえのように暮らしている。 だからこそ、不思議と呼べるのだろう。

そして、不思議の町ではなぜかいつも、お菓子やパンの おいしい食べもののにおいがしていて。 そんな色合いを、紙芝居のなかに入れるのが 楽しくもあり、できあがった作品は、とてもほのぼのと 明るい色調だったことが、仲間意識とともに、 忘れられない理由のひとつなのかも。

洗練された和製ファンタジーがまだほとんどなかった頃、 散歩がてらに歩いていけそうな不思議の町に、 あったかい思い出をもらった人がたくさんいた。 そのなかのひとりが宮崎駿監督だった。 彼は、不思議の町で、どんなリナちゃんに出会ったのか。 きっと、千尋みたいな子だったのだろう。(マーズ)


『霧のむこうのふしぎな町』 著者:柏葉幸子 / 出版社:講談社(青い鳥文庫)

2000年10月05日(木) 『レッド・デス』

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