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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2001年09月18日(火) --

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『メイおばちゃんの庭』

原題は『MISSING MAY』。 ウェスト・ヴァージニアの田舎町を舞台に、 老夫婦に引き取られた女の子がつづる物語。

子どものいなかった老夫婦、メイおばちゃんとオブおじちゃんに 引き取られたサマーは、いらない子として生きてきた。 大人というのは、遠慮するだけの相手だった。 おんぼろトレーラーハウスで新しい家族と暮らすまでは。

それなのに、世界の中心だった メイおばちゃんが突然、逝ってしまった。 目に見えない「白い魂」に、なってしまった。 おじちゃんのつくる、芸術的な「風舞」みたいに。

おばちゃんの前では泣きたい人は泣き、 笑いたい人は笑うことができた。 おばちゃんは出会った人をみんな信じていて、 この信頼はうらぎられたことがなかった。 (引用)

神様がはやく戻っておいでと呼び寄せたかのように、 まえぶれもなく、おばちゃんは、この世界から消えた。 愛するメイおばちゃんが逝ってしまってから、 サマーとオブおじちゃんの生活は、 がっくりとトーンダウンする。 二人とも、食べることすらままならない。 あんなにすばらしく回っていた生活が、さびついてゆく。 主を失った庭も、台所も、日々、輝きを失う。

近所に住む、サマーいわく"ベタベタした髪"の 変わった少年・クリータスは、二人の家を足しげく訪れる。 サマーのことを物書きだと言い張り、 おじちゃんを会話に引き込むクリータス。 この物語のなかでは、何も書いていないサマーだが、 確かに、その観察力、感性は作家のものだ。 いつか本物の作家になる、その卵なのだ。

クリータスは、ついに、オブおじちゃんのために、 パトナム郡の霊媒・コウモリ巫女に会いにゆこうよと誘う。 そして、生きている3人の生活に、 待ちつづけた転機がおとずれる。

サマーやオブおじちゃんが、メイおばちゃんを失って とってもつらい状態のときにも、読者の私たちには、ちょっとだけ 安心できることがあった。 きっと、これを読んだ人はみなそうだと思う。

失うことのつらさをかみしめながら、出会えた歓びの大きさも いずれは戻ってくるはずだということ。 もうひとつ。 サマーは、メイおばちゃんというすばらしい母親をなくしたけれど、 こんなに若いのに、もう、クリータスという将来有望な ─つらいときに頼れるという意味でも有望な─ パートナーに出会っている。 それは、もしかすると、メイおばちゃんにだって お見通しだったのかもしれない。

だから、私たちは信じられる。 きっと、うまくいくっていうことを。 この信頼もまた、裏切られることはないだろう。(マーズ)


『メイおばちゃんの庭』 著者:シンシア・ライラント 訳:斎藤倫子 / 出版社:あかね書房

2000年09月18日(月) 『お風呂の愉しみ』

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