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『本朝廿四孝』四段目切りの十種香の場、 謙信の娘八重垣姫と勝頼出合いの場面。 その時──舞台にひとひら、花が散る。
歌舞伎座で起こる不可解な謎を解くため、 大部屋女形小菊と友人の探偵今泉文吾、 助手の山本少年の探偵トリオが乗り出します。 華やかな歌舞伎の表舞台とストーリー、 同時進行の舞台裏、天井の仕掛け、奈落、楽屋、 普段見られない歌舞伎座のあちこちにもぐりこめ、 顔を切られて以来役に凄みを帯びた若手立役と 徒な着こなしの魔性の女の、光の当らぬ情念の物語、 歌舞伎という特殊な「世界」における掟、 いっぱい見せて貰えてサービス満点、 しかもどんでん返し付き、舞台好きは是非ごらんあれ。
近藤史恵さんの歌舞伎ミステリシリーズ、 主題は魅力的で話も面白いのですが、 デヴュー二作目『ねむりねずみ』では やっぱりまだまだ書き方が拙く、 トリックにもかなり無理がありました。 しかしそこは衆目を集めたかっての期待の新人、 めきめきと上手くなって今回ははるかに読みやすくなっています。 謎解きしかしない探偵ブンちゃんはやっぱりぱっとしませんが、 中年女形子菊と名女形の菊花師匠が登場キャラ中では群を抜いて 生き生きとしています。 若手スターの台頭で古典芸能の人気も復活して来ているし、 今後何十年もじっくり書き続けて貰いたい楽しみなシリーズです。(ナルシア)
『散りしかたみに』 著者:近藤史恵 / 出版社:角川文庫
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管理者:お天気猫や
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