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『魔女の宅急便』の3巻。 3冊目ともなると、そろそろマンネリかなと、 軽い気持ちで手に取った。
開いた途端、 そのビターさに、ページをめくる手も止まる。 5月に読み始めたのだが、 どうも気が乗らなくてストップして、 その後は、 仕事のが忙しかったり、 別の本を読んでいたり、 あれやこれやで、 読みあがったのが、今日であった。
コリコの町の暮らしにもすっかりなじみ、 たくさんのともだちや仲間、理解者ができた、 魔女のキキ。 宅急便の仕事も順調で、平穏な毎日。 でも、そこに、12歳の女の子ケケがやってくる。 謎がいっぱいの少女、ケケも、魔女なのだろうか? 一つの町に魔女はひとり。 自分の居場所や大切なものをケケにとられるのではないかと、 キキは不安に飲み込まれていく。
自分の「居場所」ということを考えると、 おとなになって久しい、 この年でも、不安になることがある。 ときおり、自分の大切なものを 他人に取られてしまうんじゃないかと、 とても心配になる。 頭ではわかっていても、 きれいごとではすまない、 日々のどろどろとした、葛藤。
そういう、苦い思いを、つきつけられてしまった。 しかも、容赦なく、 ストレートのど真ん中で、痛いところをついてくる。
おとなになっても、おろかなことを繰り返す。 ほんとうに、穴があったら入りたいと思うようなこと。 わけもなく、他人に気おくれしたり、 意地を張ってみたり。 自分に自信がもてずに、 誰かをやっかんでいる。 もちろん、そんな自分は嫌だ。 どうしようもなく、恥ずかしくなって、 消しゴムで、きれいさっぱり消してしまいたい。 そんな日々を積み重ねている。
もちろん、一番いいのは、 そういう、おろかな自分を越えていくことだろう。 しっかりと自分を見つめ、 精神的にも、大きく成長できればいうことはない。
でも、私は、 このどうしようもなくおろかで、 弱点の多い、自分の「小ささ」も好きである。 ときおり、そのおろかさは、 (大げさではあるが) 一生懸命に生きていることの証であり、 自分ながら、このおろかさを愛しく思ったりしている。
理想の自分になることは素晴らしい。 けれど、 おろかで恥ずかしい自分を受け入れていくことができてこそ、 初めて、そこに「アイデンティティ」も確立できよう。
自分が自分に出会うとき、 そこに「アイデンティティ」が生まれる。(シィアル)
『魔女の宅急便 その3 ―キキともうひとりの魔女』 / 著者:角野栄子 / 出版社:福音館書店
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管理者:お天気猫や
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